車検を通すためには、様々な整備・点検が必要です。でも通常の基本的な整備・点検だけでは車検が通らないこともあります。その代表的なものが、バッテリーの不具合です。
車検の見積りの段階で業者から「バッテリーの交換をしないと車検が通りませんよ」といわれてしまった場合は、車検基本料にバッテリー交換費用が加わります。そのため車検費用の総額も、追加した分高くなります。
でも本当にバッテリーの交換をしないと車検は通らないのでしょうか?車検を通すための保安基準はどうなっているのでしょう?
そこで今回は、バッテリーが原因で車検が通らない理由や交換をするタイミング、さらにバッテリー交換にかかる費用とその方法をまとめて解説します。
1. バッテリーが原因で車検が通らない?!
車検業者から「バッテリーを交換しないと車検が通らない」といわれてしまうと、車検を通すためなら仕方がないと思ってしまうはずです。では車検業者からバッテリー交換を薦められたとき、本当に交換をしないと車検は通らないのでしょうか?
1-1. バッテリーに関する保安基準
車検を通すためには、あらかじめ陸運局が提示している保安基準をクリアする必要があります。保安基準は各パーツで決められています。ですからバッテリーに関しても保安基準はあります。
バッテリーとは
バッテリーとは、車を動かすために必要な蓄電池のことです。「電気エネルギーを作り出すための装置」というわけですから、内部には2種類の異なる電極と電解液が入っています。これらが正しく反応することによって、車を動かすために必要な電気的エネルギーを作り出します。
またバッテリーは、外部からの電気的エネルギーを一度内部に取り入れ、元の化学的エネルギーとして蓄える役割もあります。そのためバッテリーは車のエンジンと同じくらい重要な働きがあります。
バッテリーの保安基準は?
バッテリーの検査をクリアするためには、①振動や衝撃などによって損傷しない状態であること ②蓄電池本体が絶縁物によってきちんと覆われている事 が必要です。
1-2. バッテリーで車検に落ちることはない
極論で言えば、「バッテリーが壊れていても車検に落ちることはない」となります。
車検を通す上での保安基準が①きちんと固定されている事 ②バッテリーが何かに覆われていれば良い の2つだけですから、これさえ出来ていればたとえバッテリーが故障していたとしても、それだけが原因で車検に落ちることはありません。
ただしバッテリーの性質上、バッテリー本体がむき出しの状態で車に設置されるということはほぼないでしょう。さらに故障している状態では、陸運局に車を持ち込むことすらできません。
つまり物理的に考えてみれば、「バッテリーが正常な状態で設置されていなければ車検に通すことは難しい」ということになります。
2. 車検時にバッテリー交換を進められるのはなぜ?
バッテリーは、車を長く乗り続けていく限り必ず交換する必要があります。もちろん交換の目安はありますが、車検の度に交換する必要はありません。
でも車検業者側からすればバッテリーの交換だけで1万円以上は追加請求出来るわけですから、「交換してもらえればその分高く請求できるおいしいオプション」というわけです。
要するに車検時の「バッテリー交換をした方がいいですよ」という業者からのアドバイスは、売上を上げるための営業トークというわけです。もちろん状態によっては本当にバッテリーの交換が必要な場合もありますので、きちんと内容を確認することが大切です。
2-1. 法定費用と車検基本料(点検・整備料)の違い
車検の費用には、車検基本料と法定費用の2つがあります。この2つをまとめて「車検費用」というのが一般的なのですが、この2つには違いがあるため理解していないと賢く車検費用を節約することはできません。
法定費用とは?
法定費用は、車検を通す上で必ず必要となる費用です。点検や整備、各種手続きなどをすべて自分で行うユーザー車検の場合も、法定費用は必要になります。法定費用には、「自動車重量税」「自賠責保険料」「印紙」の3つがあります。
自動車重量税は、排気量によって納税額が定められています。また自賠責保険は、車を所有している人は必ず加入しなければいけない強制保険です。車検を通すためには自賠責保険に加入していることを示す「自賠責保険証」が必要です。
一般的には車検を通すタイミングで保険の更新をするため、車検の法定費用とされています。印紙は、陸運局での検査や登録に関する手数料として支払います。支払う金額もあらかじめきめられています。
これに対して「車検基本料」は、やり方次第で金額を抑えることもできます。すべての整備・点検・手続きを自分で行うのであれば、車検基本料は必要ありません。ただしこれらの作業をディーラーや民間車検場などに依頼すると、車検基本料として請求されます。
ですから車検基本料は「車検を通す上で最低限必要となる整備・点検」と思った方が良いでしょう。ちなみに修理が必要になった場合の修理費は、車検基本料には含まれません。
2-2. バッテリーの寿命と交換時期の目安
バッテリーの寿能は「4年」が目安とされています。交換する際も「バッテリーの寿命=交換時期の目安」とされています。
ただし車の使用状況によって交換時期には違いがあります。ほぼ毎日車を利用しているハードユーザーの場合は、寿命の目安といわれている4年よりも早く劣化します。場合によっては2年毎の車検の度に交換が必要なケースもあります。
これに対してほとんど車を使わないユーザーの場合は、バッテリーの寿命である4年を過ぎてもバッテリーの性能がほとんど落ちていないこともあります。
2-3. 車検時のバッテリー交換費用
車検時のバッテリーの交換費用は、「バッテリー本体の料金」と「バッテリー交換作業工賃」の2つになります。そのため車検をどこに依頼するのかによって、車検時のバッテリー交換費用は異なります。
最も高いのはディーラー車検です。正規部品を使うため、バッテリー本体の料金が高くなります。ただしディーラーによっては作業工賃をサービスするケースもあります。
おすすめなのは民間車検場やカーショップなどでの交換です。車検前にバッテリー交換だけを済ませるのであればバッテリー本体は4000~5000円が相場ですし、店舗によっては無料で取り付けてくれるところもあります。
3. 自分でバッテリー交換すれば安く済む!
車検のためにバッテリー交換をするのなら、すべてを自分で行うユーザー車検という方法もあります。
あなたの車に合うバッテリーを格安で購入し自分で取り付ければよいのですから、作業工賃は無料です。あとは「どれだけ安く性能の良いバッテリーを探すか」にかかっています。手間はかかりますが、費用は最も安いですよ。
3-1. 業者とDIYのバッテリー交換費用を比較
ディーラーよりも安くバッテリーを交換したいのなら、「民間業者を利用する」または「自分でバッテリーを交換する」のどちらかになります。
費用を比較してみれば、一目瞭然です。格安で質の良いバッテリーが手に入るのであれば、確実に自分で取り付けた方が安く済みます。ただしバッテリーを探す手間と取り付け作業の手間は省けません。
これに対して業者のバッテリー交換費用は、「バッテリー本体価格+作業工賃」でも5000~8000円が相場です。しかも作業工賃が含まれていますから、取り付ける手間も知識も必要ありません。
3-2. DIYでバッテリー交換する方法
DIYでバッテリーを交換するなら、次のような作業方法を参考にしてください。
作業場所を確保する
安全に作業を終えるためにも、作業がしやすい場所に車を移動しましょう。突然の雨が降った時のことも考えて、屋根があるガレージなどで行うのがおすすめです。
エンジンを止める
バッテリーの交換作業は、車を完全に停止させる必要があります。まずはエンジンを止めます。その上でキーも必ず外します。最後にライトなどのスイッチが切れていることを確認します。
古いバッテリーを取り外す
バッテリーを取り外すときは、マイナス側のケーブル端子から外します。外し終えたら、プラス側のケーブル端子を外します。
マイナス・プラスのケーブル端子がきちんと取り外せたら、バッテリーの取り付け金具を取り外します。新しいバッテリーを取り付ける際にも必要になりますから、無くさないようにきちんと保管しましょう。
取り付け金具が取り外せたら、バッテリーを車本体から取り外します。
新しいバッテリーを取り付け金具で固定する
古いバッテリーが取り外せたら、準備しておいた新しいバッテリーをセッティングします。正しくセッティング出来たら、バッテリー取り付け金具でしっかりと固定します。この時に緩みなどがあった場合は、車検の基準をクリアできません。
新しいバッテリーを取り付ける
バッテリーを取り付け金具でしっかりと固定出来たら、取り外す時と逆の方法でケーブル端子を取り付けます。新しいバッテリーの場合は、「プラス側のケーブル端子」を取り付けた後で「マイナス側のケーブル端子」を取り付けます。
4. 車検費用にバッテリー交換が含まれている場合は詳細の確認を!
業者に車検をお願いする時の車検費用には、「車検基本料」と「法定費用」のほかにバッテリー交換などの「オプション費用」があります。バッテリー交換が本当に必要な場合は含まれても当然ですが、業者側の営業トークの「交換した方がいいですよ」には注意が必要です。
賢く車検費用を節約するためには、車検の見積もりに「バッテリー交換」と書かれている場合にきちんとその理由を確認することが大切です。確認もしないままに交換してしまうと、思わぬ出費となってしまいますよ。