車を運転している限り、いつどこで事故に遭うかわかりません。そのため車には事故に遭った場合に備えた保険があります。
保険にも「自賠責」と「任意」の2種類ありますが、車のオーナーになるためには強制保険といわれる「自賠責」に必ず入らなければいけません。
強制保険といわれる自賠責は、車検の更新と併せて加入をするのが原則です。つまり「車検切れ」の場合はこの保険が切れている可能性が高いわけです。
そうなると気になるのが、「車検が切れて事故に遭った場合はどうなる?」ということですよね?
そこで今回は車検切れで事故に遭った場合について、加害者目線・被害者目線のそれぞれでわかりやすく紹介していきます。
1. 車検切れの車で事故を起こした場合の罰則・罰金・免許点数は?
車検切れの車の事故に関する法律には、「道路交通法」と「道路運送車両法」がかかってきます。
車で事故に遭った場合に関係するのは「道路交通法」です。これに対して車検が切れていることに関係するのが「道路運送車両法」です。
通常の場合であれば「道路交通法の違反」に対する罰則などがかかってくるのですが、車検切れの場合にはそれと併せて「道路運送車両法の違反」に対する罰金がかかってきます。
道路交通法には「違反点数制度」があります。日本の場合は「累積方式」と呼ばれていて、免許を取得した時点では0点なのですが事故や違反を起こすとどんどん点数が加算されていきます。
さらに違反点数が既定の範囲を超えると、違反点数が加算されるだけでなく厳しい処分も科されます。もちろん処分内容にも段階があり、最も重い処分は「免許取り消し」です。
車の事故の違反点数の仕組み
車の事故の場合は、「何らかの交通違反を起こした結果事故につながった」と考えます。
交通違反にも様々な種類がありますが、車の事故に関して多いのが「スピード違反」「信号無視」「前方不注意」「車間距離不保持」などです。
違反点数は事故につながる交通違反の種類によって違いますが、これらの違反点数のことを「基礎点数」といいます。
ちなみに車の事故の場合は、物損と人身に分かれます。中でも人身の場合は、相手がケガをしていますからケガの具合も違反点数に関係してきます。
単独の場合は事故を起こした本人だけにかかってきますが、被害者と加害者がいる場合はそれぞれの責任の程度によって点数は変わります。
このように事故に遭った状況や被害者の怪我の状態、責任の程度によって違反点数が変わるものを「付加点数」といいます。
ですから車の事故の場合は、「基礎点数」と「付加点数」を足したものが「違反点数」として累積されるようになっています。
事故を起こした回数によっても行政処分は変わる
事故を起こした場合、違反点数が一定の範囲を超えると免許停止や免許取り消しなどの厳しい処分を受けます。でも事故の場合の違反点数には特例があります。
たとえばゴールド免許の場合、違反点数が3点以内であれば違反後の3か月間を無事故・無違反で通すと点数は累積されません。これは「過去2年間無事故・無違反」の場合も同じです。
事故を起こす前の1年間が無事故・無違反の場合も特例が受けられます。この場合は1年以上前の違反点数は累積されません。
過去に免停処分を受けたとしても内容によって行政処分が変わる
過去に免許取り消しの処分を受けた場合も、その後の状況によって行政処分が変わってきます。
免許停止処分を満了していた場合、事故を起こす前に1年以上無事故・無違反だったなら行政処分の前歴は付きません。ところが免許停止処分を受けている間に事故を起こした場合は、行政処分の前歴が付きます。
事故の違反点数
事故を起こすに至った直接の原因が何かによって、違反点数に違いがあります。主な違反の種別ごとに違反点数を一覧にしておきます。
違反の種類 | 違反点数 |
酒酔い運転 | 35 |
無免許運転 | 19 |
酒気帯び運転(0.25mg以上) | 25 |
酒気帯び運転(0.15mg以上0.25mg未満) | 13 |
30㎞以上50㎞未満(一般道) | 6 |
40㎞以上50㎞未満(高速道) | 6 |
50㎞以上 | 12 |
信号無視(赤色等など) | 2 |
信号無視(点滅) | 2 |
車間距離不保持 | 1 |
車検切れで事故を起こした場合
車検切れで事故を起こした場合は、事故の違反点数に加えて車検切れに対する違反点数が加算されます。この場合は「無車検運行」となるので、違反点数は6点となります。
ちなみに罰則・罰金もあり、6カ月以下の懲役馬潟30曼円以下の罰金となります。
1-1. 車検切れの車で人身事故を起こした場合
人身事故を起こした場合は、車検切れで事故を起こした場合の違反点数に加え、被害者のケガの状態に応じて事故点数が加算されます。事故点数には「責任の重さ」も関係してきます。加害者のケガの程度が同じでも、加害者の責任が重い方が事故点数は高く、加害者の責任が軽い場合は事故点数も低くなります。
【被害者のけがの程度別】事故点数一覧
被害者のけがの程度 | 交通事故点(責任の重さ別) |
死亡事故 | 責任が重い … 20
責任が軽い … 13 |
後遺症が残った場合 | 責任が重い … 13
責任が軽い … 9 |
全治3か月以上のケガ | 責任が重い … 13.
責任が軽い … 9 |
全治30日以上3か月未満のケガ | 責任が重い … 9
責任が軽い … 6 |
全治15日以上30日未満のケガ | 責任が重い … 6
責任が軽い … 4 |
全治15日未満のケガ | 責任が重い … 3
責任が軽い … 2 |
1-2. 車検切れの車で物損事故を起こした場合
物損事故の場合、刑事・行政処分の対象にはなりません。違反点数もつきません。ただし車検が切れていることに対する処分はあります。
この場合は「無車検運行」に対する処罰となりますので、「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」と「違反点数6点」が科せられます。
1-3. 車検切れの車で事故を起こした場合の刑事罰
車検切れの車であっても、刑事罰の対象になるのは「相手にケガをさせた場合」になります。
あなたが加害者であっても被害者にケガがない場合は「物損事故」になります。この場合の刑事処分はありません。
ただし被害者にケガをさせた場合は、「人身事故」になります。人身事故については「自動車運転死傷行為処罰法」という法律があります。これに違反したということになりますので、刑事処分の対象になります。
この場合は「道路交通法違反」に対する処分と「自動車運転死傷行為処罰法違反」に対する処分がかかります。
2. 車検が切れている車の自賠責保険の補償
車検が切れているということは、車検の更新と併せて加入する自賠責も切れていると考えられます。
そもそも自賠責は「被害者の補償のための保険」ですから、事故を起こしたあなた自身には何も補償されません。
さらに相手への補償も全額自己負担となります。補償が出来ない場合は、自己破産をするしかありません。
3. 車検が切れている車の任意保険の補償
任意保険の契約内容によって異なります。あなたが加入している保険の規約を確認する必要がありますが、原則として「車検が切れていない状態で事故を起こした場合」が補償の対象となります。
4. 車検が切れている車で事故を起こした加害者の救済
車検が切れていても、自賠責が切れていない場合は保険で加害者への補償が出来ます。ただし補償が出来るのはあくまでも被害者のケガと車の補償なので、あなた自身のケガや車の補償はありません。
またガードレールなどにぶつかって壊してしまった場合の補償はありません。
5. 車検切れの車からもらい事故にあった場合、被害者の補償はどうなる?
貰い事故に遭ってしまった場合は、まずは相手が自賠責に加入しているか確認しましょう。自賠責では、あなたのケガや車の補償をしてくれます。
死亡した場合は、死亡に至るまでにかかった治療費や損害費用と慰謝料、さらに葬儀費用なども補償されます。
ケガの場合は、完治するまでにかかった治療費や慰謝料、さらに完治するまでの休業補償などがあります。
事故によって後遺障害を負った場合は、後遺障害によってあなたが今後被る逸失利益と慰謝料、さらに後遺障害が認定されるまでにかかった費用などが補償されます。
ただし車検切れを起こしている場合は、自賠責も切れていると考えた方が現実的です。
補償を請求しても加害者に支払い能力がない場合は、民事裁判を起こし慰謝料と損害賠償を請求することになります。
6. 車検切れの車で事故を起こす前に車検期限の確認を!
交通事故を起こしてしまっただけでも、相手への補償だけでなく罰則・罰金・違反点数が付きます。
しかも自賠責では被害者の補償だけが対象になりますから、任意の保険に加入していなければあなた自身の補償はされません。
その上に車検が切れているとなれば、あなたが負わなければならない処罰はさらに重くなります。
「ほんの少しの間だから…」という甘い考えが、もしかしたらあなたの一生を左右するような重大なことになるかもしれません。
ですから車を運転する際は、車検の確認を必ずしましょう。期限が切れていないかチェックするだけでも、万が一の場合に備えることが出来ます。