車検には、国によって定められている保安基準があります。しかも車検でチェックされる項目は広範囲にわたって細かく定められている上に、一つでも不合格になると車検が通りません。
そんな車検で見落としがちなのが、ホイールなど足回りに関する点検項目です。車の見た目を大きく左右するホイールですが、保安基準を満たしていないと車検に通すことが出来ません。
せっかく時間とお金をかけて車検を受けるのですから、出来るだけ賢く車検を通したいですよね?
そこで今回は車検において見落としがちな「ホイールの保安基準」を解説しながら、一発で車検合格となるために注意しておきたいポイントをまとめてみました。
1. 車検に通るホイールの保安基準
車検は「次の車検まで問題なく走ることが出来るか」を検査するのではありません。あくまでも「現時点で安全に走行できる状態にあるのか」をチェックします。
そのため普段の走行に問題を感じなかったとしても、国が定める安全基準をクリアしていない場合は不合格となります。
一般的にはエンジンなど車の内部に関する整備不良や故障などが見つかった場合に不合格となるのですが、ホイールが原因で車検に通らないこともあります。
実はホイールに関しても厳しい保安基準があり、その基準をクリアしていない場合は不合格になってしまうのです。せっかくこだわりを持って購入したホイールなのですから、出来れば車検のためだけに取り換えるのは避けたいですよね。
それならばぜひ知っておいてほしい「ホイールに関する3つ規格」について解説してみましょう。
・乗用車の場合に知っておきたい規格【JWL】
車のナンバーが「3」または「5」の場合、ホイールの保安基準とされるものです。乗用車でドレスアップのためのホイールといえば、アルミホイールが一般的ですよね?でもこのアルミホイールは、「道路運送車両法」と呼ばれる法律によって基準が決められています。
この基準がクリアされているホイールには、「JWL」の刻印があります。JWLは日本が独自に定めたホイールの保安基準なので、国産のアルミホイールのほとんどはJWLの保安基準をもとに設計されています。
・貨物車・バスの場合に知っておきたい規格【JWL-T】
車のナンバーが「1」または「2」の場合にホイールの保安基準とされるものです。貨物車として使用する場合や11名以上の乗車定員のバスなどのホイールが、JWL-Tの保安基準をもとに設計されます。
もちろんこの基準をクリアしたホイールは、「JWL-T」の刻印があります。ちなみにどんなに安全性が高いホイールであったとしても、日本の車検ではJWL-Tの刻印がない場合はほぼ不合格となります。
・確実に1発合格するために知っておきたい規格【VIA】
ホイール試験協議会が実施しているホイールの保安登録制度のことを「VIA登録」と呼びます。JWLやJWL-Tとは違う第三者の立場で、ホイールの安全性や技術を確認・認定しているのがVIAの特徴です。
VIAの場合は、ホイール試験協議会に登録されたホイールに限り「VIA」の刻印が認められています。もちろんVIAもホイールの保安基準規格として認められているので、車検でVIAの刻印があるホイールも問題なく車検に合格します。
2. ホイールのインチアップ後はスピードメーター検査に注意
タイヤ周りのドレスアップといえば、インチアップがありますよね?でもインチアップをした場合は、特に「スピードメーター検査」に注意が必要なのです。
インチアップすると確かに見た目がシャープな印象になります。でも正しくインチアップしなければ、そのことが原因で重大な事故を引き起こすリスクが高まります。つまり「車検に通らない」ということです。
車検は「安全に車が走行できる状態にあるか」を確認するための検査なのですから、走行中に重大な事故を起こす可能性があるものについては「基準を満たしていない」とされ不合格になります。
特に注意しておきたいのが、インチアップ後のスピードメーターの検査です。スピードメーターは特別なものではありません。普段あなたが運転している時にスピードをチェックする時に見るあのメーターのことです。
実はスピードメーターで表示される速度は、安全なスピードで走ることを目的に実際の速度よりも若干高めに表示されるようになっています。
これは「法定速度を超えないようにあらかじめドライバーに注意させること」を目的としているため、メーカーによって設定速度に違いがあります。
そのためスピードメーターの表示においては、保安基準を満たしているとされる数値に許容範囲が設けられています。つまり車検においては、スピードメーター検査で合格ラインとされる許容範囲内である必要があります。
ところがインチアップしてしまうと、純正品と比べてタイヤの大きさが変わります。大きさが変わるということは、同じように1回転しても進む距離が変わることになります。
つまりスピードメーターと実際のスピードに誤差が生じるわけです。インチアップしたとしても、スピードメーター検査の許容範囲内であれば何も問題はありません。
ただし許容範囲から外れた場合は、「誤差が大きい」と判断され不合格になります。
3. ホイールとタイヤのはみ出し(ハミタイ)は車検に通らない
車検の時にホイールが原因で不合格となった時によく使われる「ハミタイ」とは、ホイールやタイヤが外にはみ出してしまった状態のことを言います。
ハミタイの場合は、車検に通りません。何しろホイールやタイヤに関する国の保安基準によって、ホイールやタイヤのはみ出しが禁止されているからです。
そのため車検業者に車を持ち込んだとしても、「ハミタイのままでは車検に通らないよ!」といわれてしまうのです。
・ツライチは車検に通る?
足回りに関する車検の注意ポイントとしてよく言われるのが「ツライチ」です。
ツライチとは、「ホイールとフェンダーの面に段差がない状態」のことを言います。そのため車検での解釈としては「ツライチにしていないと車検に合格しない」となります。
一般ユーザーにわかりやすくツライチを説明するならば、「ツライチになっていない状態=ツライチ」となるでしょう。
ただ見た目の印象としては、ツライチもハミタイと同じような状態にしか見えません。ですからユーザー車検の場合は、正しくこの2つの違いについて理解をしていないと車検に通りません。
ただしホイールの構造から見てもわかる通り、言葉通りにツライチを解釈してしまうとどのホイールでも車検に通りません。でも車検の保安基準においては許容範囲というものがあるため、ツライチであってもその範囲内に収まっていれば問題はないのです。
・ホイールスペーサーをつけても車検に通る?
ホイールスペーサーとは、ホイールと組み合わせて使う部品のことです。
ホイールスペーサーには「車を安定して走行させる効果がある」「見た目がシャープに見える」というメリットがあるため、足回りのドレスアップや高速走行の安定性を高めるために取り付ける人も多いはずです。
ただしホイールスペーサーは、タイヤを外側に引っ張る働きをしています。つまり車検でNGとされるハミタイの状態を意図的に作っていることと同じなので、保安基準の範囲を超えて外側にはみ出してしまっている場合は車検に通りません。
もちろん基準の範囲内であれば、ホイールスペーサーがついていても車検を通すことは出来ます。
・平成29年6月22日以降に保安基準の改正
「ハミタイの状態では車検に通らない」と解説しましたが、平成29年6月22日以降に行われる車検においては「ハミタイでも車検に通ることがある」に変わります。
実は「回転部分の突出禁止規定」というものがあって、これまでは「一切突出してはいけない」とされてきました。そのためハミタイは車検に通りませんでした。
これに対して平成29年6月22日以降に施行される規定では、「10mm未満であれば突出していないと判断する」に変わったわけです。
だから10㎜以下のハミタイであれば、そのことが理由で車検に通らないということがなくなるわけです。
ただし注意点があります。保安基準改正の適用に以降も、外側にはみ出してよいのはタイヤのゴムの部分に限られます。つまりホイールに関しては、これまでと同じ保安基準が適用されます。
ですから保安基準が改正されたとしても、これまで通りの基準をクリアしていなければいけないのです。結論から言えば、「ハミタイでも車検に通る」という解釈は間違いです。
この部分を勘違いして解釈してしまうと、ユーザー車検の場合は特に危険です。1発合格を狙うためにも、ぜひ正しく解釈をしておきましょうね。
4. JWL(JWL-T)の刻印されたホイールでないと車検には通らない
日本独自の保安基準を合格していることを表しているのが、JWLおよびJWL-Tの刻印です。しかも国内で製造されているホイールのほとんどが、この保安基準をもとに設計されています。
ですから「国産ホイールである=JWL(JWL-T)の刻印がある)」と考えた方が分かりやすいです。国産のホイールは、車検の保安基準を満たしていることが前提にあります。
もちろんVIAで登録されているホイールの場合も、問題なく車検では通ります。でもほとんどのメーカーがJWLまたはJWL-Tの保安基準を参考にしていますし、国が定める保安基準の告示においても、「JWL(JWL-T)のマークがないと不適合となる)とハッキリと書かれています。
ですから結論から言えば、確実に車検を通したいのならJWL(またはJWL-T)の刻印されたホイールでないとダメだといえるでしょう。
・輸入ホイールは車検に通る?
輸入ホイールの場合は、基本的には車検に通りません。道路運送車両の保安基準の告示を見ても、『JWL(-T)マーク、または自動車製作者(自動車メーカー)を表すマークがない場合は保安基準不適合となる』とされています。
ですから製造した国の保安基準をクリアしたホイールであっても、輸入ホイールはほとんど通らないと考えた方が無難です。もちろん輸入ホイールであっても例外的に国が認めたものであります。
その場合は輸入ほりーるでも車検も通ります。ちなみに輸入車の場合は、あらかじめ日本の保安基準をクリアしているため問題はありません。
5. まとめ
車のドレスアップや普段の走行レベルをアップさせるためには、どうしてもホイールにこだわってしまいます。でもそのことが原因で車検が通らなくなるケースもあります。
1発で車検を通すためにも、「車の足回りが本当に車検の保安基準をクリアしているか」確認するひと手間は大切ですよ!