ディーゼルエンジンは燃料が軽油でコストが安く、ガソリンエンジンよりも頑丈に作られています。コストパフォーマンスに優れている事から、商用車は勿論の事レジャーにも使える魅力的なエンジンですよね。
しかし、その魅力的なメリットを最大限に活かす為には、最適なエンジンオイルを選定しなければなりません。なぜなら燃費、エンジンの寿命にはエンジンオイルの性能が大きく作用するからです。
この記事では、そんなディーゼルエンジンにオススメのエンジンオイルをご紹介します。また、後半にはディーゼルエンジンにまつわるQ&Aもあるので、是非ご覧になって下さい!
ディーゼル車のエンジンオイル交換方法
エンジンオイルの交換手順としてはガソリンエンジンとの違いはありませんが、交換時期・頻度・エンジンオイルの種類は少々異なります。
まず、ディーゼルエンジンのエンジンオイルを交換する前に、最低限知っておきたい基本的な情報からご紹介します。
交換時期・頻度
ディーゼルエンジンのエンジンオイルは、一般的に多くのメーカーで1年もしくは1万㎞での交換を推奨しています。しかし、シビアコンディションでの使用頻度が高い場合は、もう少し早めの交換をオススメします。
また、クリーンディーゼルではディーゼルターボの採用が多く、ターボ車の場合はガソリンエンジンと同様に交換サイクルが早まり、半年もしくは5千㎞での交換が必要です。
あくまでもこれらは一般的な交換サイクルであって、車種やメーカーによっても異なる場合があるので、エンジンオイルを交換する際は必ずメーカーが指定している交換時期・頻度を確認して下さい。
値段
価格は標準的なもので、4ℓボトルが1,000円〜3,000円程で購入できます。
ガソリンエンジンオイルと比べると、作業手順や工賃などでは違いはありませんが、エンジンオイルの単価はわずかに高くなっています。
ディーゼル車のエンジンオイルの種類
ディーゼル車のエンジンオイルは、ガソリン車と共通しているSAE(アメリカ自動車技術者協会)粘度規格、エンジンオイルの性能を示したAPI(米国石油協会)規格、日本のJASO(日本自動車技術会)規格、ACEA(欧州自動車工業会)エンジンオイル規格などによる表記で品質を確認する事ができます。
統一されておらず非常に複雑ではありますが、SAE粘度規格とグレードの表記を確認する事で、エンジンオイルの性能を確認するという事です。
粘度
粘度は〇〇W-〇〇などと表記され〇の部分には、それぞれSAE規格に基づいた温度区分による番号が記載されます。
エンジンオイルは温度による影響を受けやすく、温度が低くなると硬く(ネバネバに)なり、温度が高くなると柔らかく(サラサラに)なる特性があります。この両方の温度域で、エンジンオイルとしての性能を維持できる温度の指標となるのが、SAE粘度の規格による表示です。
Wの左側には低温を表しており、日本国内であれば、
- 0W(-35℃)
- 5W(-30℃)
- 10W(-25℃)
- 15W(-20℃)
などが使用されています。
Wの右側のハイフン以降の数字は高温を示しており、それぞれの温度区分ごとの100℃における動粘度を示しています。それぞれ、
- 20(5.6~9.3mm2/s)
- 30(9.3~12.5mm2/s)
- 40(12.5~16.3mm2/s)
- 50(16.3~21.9mm2/s)
- 60(21.9~26.1mm2/s)
などと表記されています(記載は20~60などの番号表記のみ)。
規格(グレード)
JASO規格
規格(グレード)についての表記は、アメリカのAPI規格では国産ディーゼル車に対応していない事から、2001年新たにAPI規格に必要項目を追加したJASO規格が制定されました。このJASO規格によって、
- 乗用車用:DL-1
- バスやトラック、貨物用:DH-1およびDH-2
このように表記されています。
ACEA(欧州自動車工業会)エンジンオイル規格
また、一部国産車や欧州車については、ACEA(欧州自動車工業会)エンジンオイル規格によるグレード表記がされている場合もあります。ディーゼル乗用車の普及が進んでいる欧州エリアのACEAエンジンオイル規格だけあって、グレード分類は細分化されたり必要に応じて改正されたりと、複雑な分類となっています。
ACEA2020(2020年の新規格)ではガソリン・軽荷重ディーゼルエンジン用ではA3/B4、A7/B7と記載されます。A1/B1、A2/B2、A3/B3、A5/B/5といった破棄された分類もあるので、メーカーがこれらを推奨している場合は、現在のカテゴリーで相当するエンジンオイルを確認する必要があります。
排ガス対策装置装着車用では、
- C2(リン0.09mass%以下、硫黄0.3以下、硫黄灰分0.8mass%以下)
- C3(リン0.07~0.09mass%以下、硫黄0.3以下、硫黄灰分0.8mass%以下)
- C4(リン0.09mass%以下、硫黄0.2以下、硫黄灰分0.5mass%以下)
このように分類され、C1、C5カテゴリーは破棄され、C5カテゴリーの上位互換に当たるC6カテゴリーを導入予定です。
割愛しますが、これらの他に高負荷商用車のEカテゴリーが存在します。
現在のディーゼルエンジンオイルは、JASOとACEA、API規格を用いて表記されています。
ディーゼルエンジンオイルのAPI表記はCA、CB、CCなどと、アルファベットCから次に続くアルファベットの順に性能が良くなっていきます。また、F以降はCF-4、CG-4と数字が付いていますが4サイクルという意味です。
ディーゼル車のエンジンオイルの選び方
クリーンディーゼルのシェアが高まった事で、ディーゼルエンジンオイルの規格もそれに合わせて随時更新されてきています。そのため、クリーンディーゼルに対応している規格の範囲内で上位互換の規格に変える、及び粘度を指定粘度内で変更するといった選び方をしなければ、排出ガス浄化装置の寿命を縮めてしまいます。
ディーゼル車にオススメのエンジンオイル
では、主要自動車メーカーが推奨しているディーゼルエンジンオイルをご紹介します。
トヨタキャッスル DL-1 5W30
価格
性能
平成17年に制定されたディーゼル車を対象として排ガス規制以降の車に対応したDL-1です。トヨタディーラーでも使われているキャッスルのエンジンオイルで、1BOX商用車の代表格ハイエースにも対応しています。
マツダ ディーゼル エクストラ スカイアクティブD用 0W-30
価格
性能
欧州に続いて、日本で先駆けてクリーンディーゼルを流通させたのがマツダです。マツダが開発したスカイアクティブD専用のエンジンオイルで、アクセラ、アテンザ、CX-3、CX-5などスカイアクティブD搭載車種に適合しています。
ニッサン純正オイル クリーンディ-ゼルオイル 5W-30
価格
性能
日産のクリーンディーゼル搭載車(エクストレイルT31、キャラバンE26)に適合しているエンジンオイルです。DL-1との互換性はなく、ACEA規格のC3に相当するエンジンオイルです。
ディーゼルエンジンのオイル交換に関するQ&A
ディーゼル車とガソリン車のエンジンオイルの違いは何ですか?
ディーゼル車とガソリン車の大きな違いとして、燃料の違いが挙げられます。
軽油は燃焼行程で、スラッジやゴミの原因となるものをガソリンよりも多く発生させてしまいます。これらを除去する為に強い洗浄作用を付与させたものが、ディーゼルエンジンオイルです。
また軽油は硫黄含有量が多いので、エンジンを腐食させる硫黄酸化物を精製してしまいます。ディーゼルエンジンオイルには、これを中和させる洗浄分散剤として、アルカリ性物質が多く含まれています。
ディーゼル車にガソリン車のエンジンオイルは使えますか?
ガソリン車用のエンジンオイルをディーゼル車に使用した場合、ディーゼルに必要な洗浄分散性能が低いので適していません。ただし、ユニバーサルオイル(ガソリン・ディーゼル兼用)であれば、どちらのエンジンにも対応しています。
ユニバーサルオイルは、ガソリンのAPI規格とディーゼル規格の両方が記載されており、SN/CFなどと表記されます。記載のガソリン・ディーゼルの順番は、どちらのエンジンオイルを主眼として開発されたかを表しています。
SN/CFの場合、ガソリンの規格であるSNが先に記載されているので、ガソリンエンジンオイルを主眼として開発されているオイルという事になります。
ディーゼルエンジンのオイル添加剤にはどんな効果がありますか?
ディーゼルエンジンオイルには高い洗浄作用が要求され、この性能は添加剤によって補っています。
他にもDPF、DPRなどの排出ガス浄化装置が採用されている車は、無灰系添加剤のようなフィルターが目詰まりを起こさない為に工夫された添加剤が使用されています。
詳しくは「ディーゼル エンジン オイル 添加 剤」で紹介しますので、概要を説明してください
まとめ
ディーゼルエンジンはトルクフルで頑丈なイメージがある一方で、シビアなエンジンオイルの選定が必要だという事が分かりました。また、ガソリンエンジンとは違い、グレード規格の優先度が非常に高いという事も分かりました。
安易に規格外のエンジンオイルを使用してしまうと、エンジンにダメージが与えるばかりか、排出ガス浄化装置が目詰まりを起こしてしまい、修理が必要となるケースもあります。
このように、ガソリンエンジンより選択肢が少なくなってしまったディーゼルエンジンオイル選びですが、選択の幅を広げる事は出来ます。
ACEA規格は欧州自動車に向けた規格ではありますが、規格は欧州車向けですが、その種類は豊富な事から日本車でも使用できるエンジンオイルの種類も十分にあります。
現時点ではJASO規格の分類は多くはありませんが、新しいエンジンの開発に伴い細分化される見込みも十分にあるので、そちらにも期待したいものです。