事故にあった、事故を起こしてしまった、車をぶつけたり擦ってしまったといった場合、自動車保険でコーティングまで補償してもらうことはできるのでしょうか?
答えは「可能」です。ただし、次の3つの条件がそろっていないと補償範囲外となってしまうこともありますので注意しましょう。
- コーティングの施工証明書がある
- コーティングの保証期間内である
- 車両保険へ加入している
また、傷やへこみ、再塗装などは黙っていても元通りに修理してもらえますが、コーティングの再施工にはちょっとしたコツがあります。
さらに、保険を利用することのデメリットもご存知でしょうか?
そこで今回は、保険を使ってコーティングの再施工を受ける方法や注意点を詳しくご紹介していきます。これからも大切な愛車に気持ちよく乗るためにぜひ参考にしてください。
1. コーティングを自動車保険の補償で再施工する3つのポイント
①コーティングの施工証明書や保証書がある
まず重要になるのは、コーティングの施工証明書や保証書があることです。なぜなら、コーティング施工の有無は見た目では判断できないからです。
保険を使って再施工するためには、事故の前にコーティングが施工されていたことを明らかにする必要があるため、これらの書類が必要になります。
・記載漏れは補償対象外
ただし、施工日や施工店などの記載漏れがあると、保険の補償対象外となることがありますので記載内容も確認しておきましょう。
・施工証明書や保証書が発行されていない場合
書類の記載漏れだけでなく、そもそも発行されていない場合もあり、このままでは再施工することができません。
しかし、コーティング施工店に残っている伝票などによって施工の事実を証明できる可能性がありますので、施工店と保険会社へ確認しましょう。
②コーティングの保証期間内である
2つ目のポイントは、コーティングの保証期間内であることです。これは、コーティングが残っていた、効果が持続していたことを示すものです。
保証期間を過ぎていた場合には再施工できない可能性があります。
・保証期間内でもメンテナンスが必要
例えば3年保証と謳っているコーティングでも、その詳細を確認すると1年に1回の有料メンテナンスを受けていた場合に限り3年間保証するといった内容のものが多くあります。
そのため、メンテナンスを受けていない場合にはコーティングが保証されないため、自動車保険による再施工も認められなくなってしまうのです。
また、メンテナンスキットなどを利用したご自分でのメンテナンスでは認められません。
さらに、業者でメンテナンスを受けていた場合でも、その記録が必要になります。
・長期保証のコーティングには要注意
また、コーティングの種類や施工店によっては10年間の長期保証がついたものがありますが、10年間もコーティングが持続しているとは認められない可能性があります。
この辺りは、保険会社の判断になってしまいますが、保証がついていても5年以上は認められないケースがあるようなので注意してください。
③車両保険へ加入している
交通事故の場合、相手方の過失が100%であれば、相手方の自動車保険によって車の修理ができるため、あなたの加入している自動車保険を使うことはありません。
ただし、あなたにも過失があれば、その過失分は相手方から補償されません。そうした時は、ご自身の車両保険で補償が可能です。
もし車両保険に加入していなければ、あなたの過失分については実費になりますので注意しましょう。
・自損事故の補償には車両保険が必要
また、自損事故の場合には車両保険に加入していなければ補償されません。また、対物賠償はあなたの車の修理は対象外となりますので注意してください。
・車両保険の補償範囲の確認
さらに、車両保険には補償範囲が限定されているタイプのものがあるため、事故の内容によっては対象外となる場合があります。加入している車両保険の補償範囲を確認するようにしましょう。
保険を使ったコーティングの再施工に必要なことまとめ
自動車保険によるコーティングの再施工には、過失割合に関係なく(相手方の保険を使うのか、自分の車両保険を使うのかに関係なく)、
- 施工証明書や保証書があること
- 保証期間内であること
こちらの2つが必要になります。
また、ご自身にも過失割合があったり、自損事故の場合には、
- 車両保険に加入していること
こちらが必要条件になります。また、車両保険に関しては補償範囲の確認もしておきましょう。
2. 自動車保険でコーティングの再施工を受ける手続きとコツ
2-1. コーティングしていたことを保険会社に知らせる
自動車保険による修理は、「現状回復」が基本になります。つまり、へこみや傷、塗装はがれを元の状態に戻すための費用を賠償するものです。
しかし、先ほどもお伝えした通り、コーティングに関しては目視で確認することができないので、ご自分からコーティングしていたことを保険会社に伝えなくてはなりません。
そして、そのことを証明するために施工証明書や保証書を提出します。これを保険会社が認めれば、コーティングの再施工を含めた修理費用が支払われます。
つまり、コーティングがされていることを伝えなければ、再施工にかかる費用が支払われないということです。忘れずに伝えるようにしましょう。
2-2. コーティング施工店を保険会社に知らせる
さらに、同じお店で再施工してもらいたいことも伝えてください。これを伝えないと、板金修理をした業者にコーティングがされてしまうかもしれません。
これでは、もともとのコーティングとは違うものになってしまいますので、修理した部分とそうでない部分ではツヤや光沢、その後のメンテナンス方法なども異なってしまいますので注意しましょう。
3. 事故後のコーティング再施工に保険を使う場合の費用
事故による修理に保険を使う場合、基本的には原状回復の為に必要な修理費用全額を請求することができますが、その額が修理に必要な相当額だと判断された場合に限ります。
実際に支払われる保険金額は、業者の出した修理費用の見積もりを保険会社のアジャスターと言われる査定担当者がチェックして、妥当だと判断された(合意が得られた)場合に、その金額が支払われることになります。
また、再施工する際の注意点としては、傷やへこみ、再塗装といった板金修理をする業者とコーティングを施工する業者が異なる場合が多いところです。先ほどもお伝えした通り、コーティングしていることを伝えないと板金修理のみの保険料の支払いになってしまいますので注意しましょう。
4. 自動車保険を使ってコーティングを再施工するデメリット
ここまでは、自動車保険を使ってコーティングの再施工をする方法をお伝えしてきました。大切な愛車ですので、コーティングも補償範囲に含まれることは嬉しいことだと思います。
ただ、保険を使うことによるデメリットもあるため、こちらも確認しておきましょう。相手方に100%の過失がある場合には関係ありませんが、ご自身の車両保険を利用する時には注意が必要ですのでぜひチェックしてください。
4-1. 車両保険を利用すると等級ダウン
ご自分にも過失があったり自損事故の場合には、ご自身が加入している自動車保険の車両保険を利用することになります。
その時に注意したいことは、3等級ダウン(もしくは1等級ダウン)することです。等級ダウンがあると次年度からの自動車保険料が高くなってしまいます。
そのため、修理費用の金額によっては、車両保険を利用せず実費で支払った方が負担が軽くなることもあるのです。保険を使うのかそれとも使わないのか、落ち着いて選択しましょう。その方法についても順番にお伝えしていきます。
・3等級ダウンする場合
交通事故により保険を利用する場合、基本的には3等級ダウンになります。1年間無事故で過ごすと1等級アップする仕組みになっているので、元の等級に戻すには最短で事故の翌年から3年間かかることになります。
・1等級ダウンする場合
車の盗難やいたずら、飛び石による傷などの修理は1等級ダウンになります。詳しくは、加入されている保険会社に確認してみましょう。
4-2. 次年度からの保険料が高くなる
以上のような等級ダウンがあると、事故のあった次年度からの保険料が高くなります。
どれくらい増額するかは加入されている保険や元の等級などによって異なりますが、場合によっては修理費用よりも保険料の増額負担の方が大きくなってしまう可能性があります。つまり、必ずしも保険を利用するのが賢い選択とは限らないのです。
・事故あり係数の適用期間は保険料割引率が低くなる
事故で等級ダウンした場合には、次年度からの保険料の割引率が低くなります。
下の表を見ていただくとわかりますが、仮に10等級から7等級にダウンした場合の保険料割引率は20%となります。一方で、無事故で7等級の場合には割引率30%ですので、等級ダウンした場合には10%も保険料が高くなっていることがわかります。この保険料率を事故あり係数と言います。
また、事故あり係数の適用期間は、3等級ダウンなら3年間、1等級ダウンなら1年間になります。
このように、等級ダウン後の保険料は割高になると覚えておきましょう。保険を利用するかしないかは、事故あり係数も踏まえて考えることが重要になります。
4-3. 修理費用が10万円から15万円なら車両保険の利用は要検討
修理費用が高額になる場合は、やはり保険を利用する方が賢い選択になります。しかし、修理費用が10万円から15万円ほどの場合には、保険を使った方がいい場合と使わない方がいい場合が出てきます。
実際には、保険会社に相談してそれぞれの場合の試算を出してもらい判断するといいでしょう。3等級ダウンの場合には、事故あり係数が3年間適用されますので、次年度以降3年間の試算を出してもらうように注意して下さい。
5. 自動車保険でコーティング再施工ができなかった例
今回お伝えしてきたように、コーティングの再施工には3つの条件があります。これを満たしていなければ、保険を使って再施工できない可能性があるので注意してください。
最後に、コーティングの再施工ができなかった事例を確認しておきましょう。
5-1. コーティングの施工証明書や保証書がなかった
保険を使って再施工するためには、もともとコーティングがされていたことの証明が必要です。そのためにはコーティングの施工証明書や保証書の提出が欠かせません。
これらの書類がなかった場合には、保険金が下りない可能性があります。
5-2. 書類に記載漏れがあった
書類の記載内容に不備がある場合には保険が使えないことがあります。例えば、コーティングの施工日や施工業者名などが未記入になっているなどです。
書類の有無だけではなく、その記載事項もチェックすることが重要です。
5-3. 保証期間を超えていた(メンテナンスをしていなかった)
コーティングの保証期間を超えていると、保険を使って再施工することができません。
また、定期的なメンテナンスが保証条件となっているコーティングの場合には、メンテナンスを行なっていることやその記録も必要になります。これらがないと保険が利用できない可能性があります。
また、メンテナンスキットなどによるご自身でのメンテナンスは含まれませんので注意してください。
5-4. 自分でDIYコーティングをした
また、ご自身でコーティングをした場合にも保険は使えないと考えてください。コーティング剤の購入代金の請求も難しいでしょう。
5-5. 車両保険に加入していなかった
ご自身にも事故の過失があったり自損事故の場合には、ご自身の車両保険による補償が受けられます。
しかし、車両保険に加入していない場合には保険での再施工はできません。
また、対物賠償ではあなたの車の修理はできませんのでご注意ください。
6. 自動車保険の補償でコーティングを再施工する方法まとめ
いかがだったでしょうか?事故後のコーティング再施工も自動車保険で補償されることが理解していただけたと思います。
その際の適応条件には次の3つのポイントがあります。
- コーティングの施工証明書や保証書がある
- コーティングの保証期間内である
- 車両保険へ加入している
また、ご自身にも過失があったり自損事故の場合には、保険を利用した方がいいとは限りません。修理費用よりも次年度以降の保険料の支払い額の方が高くなってしまう場合もありますので、保険会社の担当者や修理業者とよく相談してから再施工していただくといいでしょう。
どちらの場合であっても、まずは保険会社にコーティングが施工されていた車だということを伝えることが重要になります。まだ、その旨を伝えていないようでしたら早めに連絡しておきましょう。