日本ではあまり知られていないケンドル(Kendall)エンジンオイルですが、エンジンオイルを生み出した歴史あるオイルブランドです。さまざまなテストを行い、繰り返される開発の中でケンドル(Kendall)独自の添加剤配合技術も生まれています。
まだ知らないケンドル(Kendall)エンジンオイルの世界を詳しくご紹介していきましょう。
ケンドル(Kendall)のエンジンオイルとは?
1881年ペンシルベニア州ブラッドフォードで生まれたケンドル(Kendall)は、軽油や潤滑油などの原油精製工場として誕生しています。アメリカ初の石油技術開発センターを設立し、冬の寒さにも耐え、さらに交換時期を伸ばすことに成功した世界最初のオイルを開発しました。
1902年にはスクリュートップの1クォート(0.946L)缶で発売しており、1928年には、世界最初となる2,000マイル(3,200㎞)走行することが可能なケンドルベンズベストを全米で発売しています。今までの常識をはるかに超える性能をアピールした特徴的なVサインが描かれました。
1920年代には航空機用のオイルも生産されており、ニューヨークからロサンゼルス間を飛ぶ飛行機のほとんどがケンドル(Kendall)製のオイルを使用していました。パイロットたちから信頼がおけるという意味を込めて、耐久性の言葉の代わりにケンドル(Kendall)が使用されていたとの逸話を持っています。
その後もさまざまなオイル開発に取り組み、1953年にはオールウェザー対応のマルチグレード、1959年にはデュアルアクションオイル、1960年にはレーシングオイルを発売してきました。ハイクオリティで高性能なオイルを提供することが今後も変わらない使命となっています。
ケンドル(Kendall)のエンジンオイルの特徴と性能
ケンドル(Kendall)が持つ特許技術には、添加剤配合技術MFA があります。これはMulti-Functional Additivesのことで、エンジンオイルの粘度が増加する性質や、動弁系の摩耗を抑えることができる、ケンドル(Kendall)独自の技術です。
さまざまな試験を行うことでデータを得ることができました。高速四球試験は2つで構成されており、EP試験とwear試験です。一つ目のEP試験(融着荷重)は過酷な条件下での摩耗時に焼き付きが起こる直前の荷重を調べることで、摩擦への耐性を測ります。この実験の結果は他社と比較しても、それほど大きな差は生じていません。
次に2つ目のwear試験では、摩耗痕径と呼ばれる表面損傷を受けた部分の直径を測り、耐摩耗性を比較するものです。そこで得られた実験結果においてケンドル(Kendall)は他社に比べると0.3mm摩耗痕が小さいということがわかりました。
ほかには酸化安定度試験を行っています。この試験では、オイルが酸素に触れることで酸化が起こり、スラッジなどの不純物が発生しますが、その時のオイルの酸化に対する抵抗性を測定するものです。24時間オイルに酸素を吹き込んだ実験を行った結果、他社と比較するとスラッジの量が最も少ない結果となっています。
ケンドル(Kendall)のエンジンオイルの評判
ケンドル(Kendall)のことをあまり知らなかったという人もいますが、使用感についてはどのように感じているのでしょうか。評判をご紹介していきましょう。
- 100%化学合成油が一番だと思っていましたが、ケンドル(Kendall)は鉱物油にシンセティックブレンドを行ったオイルです。少し不安がありましたが、使用してみるとエンジンの静かさに驚きました。
- ベースオイルにナフテンではなくパラフィンを使用することでオイル寿命を伸ばすことを可能にしています。エンジンノイズ、燃費がこれほど変わるとは、変えた価値がありました。
- 全然タレることがありません。エステル系のため油温がいったん上がると下がりづらい気がしますが、全回転域でピストンにオイルが絡みついているように感じます。
- 交換前には若干の滑りが感じられましたが、交換後には変速ショックもなくなり相性も良いようで絶好調です。
- 交換後には全域に渡り回転が滑らかで軽くなりました。若干ですが、低速トルクが太くなったような気がします。
- あまり日本ではなじみのないオイルですが、加速性能向上はもちろんのことエンジンの始動性やアイドル安定性向上などを持っているうえに、長距離対応できるためロングライフで経済的です。
- ターボが効き始める前のトルク感が増し、各ギアの守備範囲も低回転側に広がったようです。低温で滑らか、坂道もシフトダウンせずに登っていくので、排気量が増えたように感じました。
さまざまな意見があるようですが、エンジンの静寂性やエンジン性能の向上に期待を寄せる人が多いようです。価格は高くても、メンテナンスのサイクルが長くなることで、経済的な負担が減少するのは、お財布にも優しいといえるでしょう。
ケンドル(Kendall)と他社のエンジンオイルの違い
ロングライフ設計で1年毎にオイルを交換する簡単管理で、廃油も削減することができます。経済面と地球環境の両方を兼ね備えることができるオイルということができるでしょう。通常、標準的なオイルでは3,000㎞~5,000㎞又は6カ月でオイルを交換するものです。
しかしケンドル(Kendall)なら16,000㎞又は1年でのオイル交換をするだけで済みます。標準的なオイルではシビアコンディションで使用した場合には、3,000㎞又は3ヶ月での交換となりますが、ケンドル(Kendall)ならば、10,000㎞又は1年での交換です。
シビアコンディションには以下が含まれます。
- 渋滞に巻き込まれる
- 回転数を上げることが多い
- 1回に300㎞を超える走行が多い
- 急斜面を走る機会が多い
- 直噴エンジン
- ターボ車両
- 過走行車
- 重い荷物を常に運ぶ
通常のコンディションでは標準的なオイルの場合、1年に2~3回のオイル交換を行いますが、ケンドル(Kendall)は1年に1回だけなので、オイル交換にかかる費用を役50%削減することができます。またシビアコンディションでは標準的なオイルならば1年に3回のオイル交換を行うことになりますが、ケンドル(Kendall)なら1年に1回の交換で済むため費用を70%カットすることを可能にしました。
その他に、ケンドル(Kendall)が行った試験の中に「オイル分析レポート ニッサンフーガ 実車テスト」があります。
- テスト車両:ニッサンフーガ(250GT Y51型)
- 排気量:2,500cc
- 指定純正オイル:日産ストロングセーブXE スペシャル 5W-30 API:SM
- テスト用オイル:Kendall GT- 1Synthetic Blend エンジンオイル SEA5W-30 API:SN/GF5, RC
- オイル充填量:約4L
- テスト期間:6カ月(この間オイル補給は無し)
- 走行距離:16,558㎞
- 平均燃費:11~12㎞/L
6カ月に及ぶ試験の結果は、動粘度において約12%粘度低下がみられました。スラッジは0.01%だったことから、摩耗による摩耗粉や燃焼生成物などはほとんど発生していません。その一方で全塩基価が減少していることから、添加剤の消耗は認められます。
約16,000走行後のオイルであってもまだ継続使用しても可能な範囲と考えられています。見た目にも透明感が残っていて、ドレーンからオイルがさらっと流れ落ちるほどでした。半年の実験で約16,000㎞の距離を走行しても、まだまだ使用できる超ロングライフなエンジンオイルということができるでしょう。
そのほかには、10万㎞を超えた過走行車専用のオイルを開発しました。走行距離が増すと、目には見えない部分からもパフォーマンスは低下することになります。本来ならば、エンジンの稼働年数に対応したエンジンオイルの性能が必要なのですが、そこまで考えたオイルは少ないといえるでしょう。
ケンドル(Kendall)は過走行車には過走行車専用にハイマイレージオイルが必要だと考えています。もし以下のような症状がある時には過走行車専用のオイルへの切り替えをお勧めします。
- オイル交換は定期的に行っているにもかかわらず、スラッジ、ピストンデポジットなどが溜まることがある。
- ガスケットやバルブが緩んだり、ひび割れがあったりする。又は軽度のオイル漏れがある。
- オイルの消費が早い。オイルが焼けたにおいがする。白っぽい排気ガスが目立つ。
- 高粘度オイルを使用しているため、燃費が良くない。本来の馬力以下で、空ぶかしのような感じがする。
- エンジンから異音がしたり、エンジンが冷めるまで時間がかかったり、始動性が悪くなったような気がする。
さまざまな研究開発とテストに裏打ちされた高い性能が、過走行車のエンジンをよみがえらせることができるかもしれません。
ケンドル(Kendall)のエンジンオイルの種類と性能一覧
日本ではあまり知られていないケンドル(Kendall)エンジンオイルにはどのようなラインアップがされているのか、気になるところです。
GT-1ハイパフォーマンス 0W-20/5W-20/5W-30/0W-30/
性能
0W-20は長持ちする上に環境にも配慮したエンジンオイルの最高峰です。サラサラ感はあっても油膜が強靭なことが魅力で、焼き付きや摩耗を限界までシャットアウトします。日本、アメリカの両メーカーが要求する省燃費試験にも合格しました。
トヨタ:プリウスやアクア、アルファードハイブリッド
ニッサン:ノート
5W-20は最新式のハイブリッド車を含む低排出ガス車の9割に及ぶエンジンスペックに対応できるものです。
三菱:ekワゴン
トヨタ:エスティマハイブリッド、ヴィッツbB、マークX
5W-30は排ガスの低減、燃費向上を追求した環境対策グレードです。レクサスなどの高級セダン車のスペックに匹敵するスペックに対応しています。
10W-30はファミリーカー向けのオーソドックスなタイプです。軽自動車からセダン、ワゴン、RVのようなファミリーユースにピッタリなオイルです。ターボやDOHC車にも対応します。
GT-1コンペティション 20W-50
性能
20W-50は高回転、高出力エンジンに最適なオイルです。アメリカでも実績のあるレーシングオイルになります。15W-50,20W-50に指定されている欧州車に最適です。
GT-1 エンデュランス 5W-20/5W-30/10W-30/10W-40
性能
10万㎞を超える過走行車用の低粘度オイルです。ケンドル(Kendall)が独自に開発した「SealMax®」がエンジン各部分の密閉作用を修復するための効果を発揮します。過走行大国であるアメリカならではのさまざまなノウハウとデータに基づいて設計されました。
一台を長く乗り継ぐ人には必須アイテムといえるでしょう。
GT-1 ユーロ 5W-40/5W-30
性能
5W-40はケンドル(Kendall)モーターオイル社の最高級エンジンオイルのひとつです。100%合成油で、欧州車各社の指定銃声を受けているオイルでもあります。ヨーロピアンフォーミュラー仕様で高級外車向けです。なおこの製品には、Liquid Titanium®は配合されていないため注意してください。
5W-30は、PAO配合の100%合成油で欧州メーカーから認定を受けた純正オイルのひとつとされています。ディーゼルエンジンの排ガス中に含まれる有害物質を除去するフィルターのDPFにも対応しました。
GT-1®Motor Oil with Liquid Titanium®
性能
シングルスペックのこの製品は、空冷エンジンを搭載する旧フォルクスワーゲンビートルなどのヴィンテージーカーに最適です。外気温が高い春から夏にかけてはSEA40、反対に外気温が下がる秋から冬にかけてはSEA30を使用することでエンジンを保護することができます。
まとめ
日本ではあまり知られていないケンドル(Kendall)エンジンオイルですが、実はエンジンオイルの生みの親だったことがわかりました。長い歴史の中で培ってきた研究は、ケンドル(Kendall)独自の添加剤配合技術MFAを作り出しています。
オイルの常識を覆し、超ロングライフ設計に成功しました。また他社にはない技術力で過走行車とされる10万㎞を超える車のエンジン用にオイルを開発しています。
誰にもまねのできないオイル作りの原点はパッケージに描かれたVサインのようにゆるぎない自信として、今後も更に進化したオイルを誕生させてくれるかもしれません。