ゼロスポーツ(ZERO SP)が作り出す、スバル車専用のオイルをご存じでしょうか。
化学的な根拠に基づく製品の数々に興味を持っている人も多いかもしれません。スバル車の性能を徹底的に研究し、開発されたオイルはエンジンにどのような効果をもたらすのか気なるところです。
どのようなメーカーが、どういった技術を用いて製造しているのか、詳しくお伝えしてまいります。
ゼロスポーツ(ZERO SP)のエンジンオイルとは?
1994年、岐阜県各務原市に設立された株式会社ゼロスポーツは、2011年に2代目へと代替わりしました。事業内容に大きな変化はなく、スバルの総合パーツメーカーとして事業を展開しています。
オリジナルブランドの製品総数は582品目に達し、そのうち180品目においてスバル用品品番を獲得するなど、その高い技術力が評価されてきました。先代では、電気自動車のVCUの開発に力を入れ、郵政事業より電気自動車の受注を受けています。
その際には三菱自動車、富士重工が開発した電気自動車に競り勝ち、当時は話題になりました。高く評価された実績は、アメリカのテスラにも匹敵するとして期待されていたほどです。
日本で17番目となる小型電気自動車メーカーとして、ゼロスポーツ(ZERO SP)は高い性能の車両の開発を進めますが、2011年に郵便事業会社との契約に失敗し、自己破産の法的整理を行うことになります。
2代目へと引き継がれるときに、初代では盛んだった電気自動車事業は引き継がれませんでした。しかし、ゼロスポーツ(ZERO SP)が持つ高い技術力は健在です。現在はスバル各車のパーツメーカーとしてオイル事業にも力を入れて更なる研究開発が進められています。
さまざまなショーやレースへの参戦など、輝かしい記録の数々が残されています。
- 1995年 筑波N1ラウンドシリーズ優勝2回、2位2回
- 2003年 「東京国際カスタムカーコンテスト」で、『フォレスターCZS』がSUV部門優秀賞
- 2006年 アメリカラスベガスで世界最大のパフォーマンスカーショー「SEMA SHOW 2006」でスバルの純正インタークーラーを効率的に冷やす「クールアクションⅡ」が「Product Award」を受賞
- 2000年 「東京オートサロン」でゼロEVフォーミュラーが「審査委員特別賞」を受賞
- 2002年 「日刊自動車新聞社用品大賞2002 環境安全賞」を「ゼロEVセラビュー」が受賞
ゼロスポーツ(ZERO SP)のエンジンオイルの特徴と性能
日本全国にいるスバリストと意見交換を行うと、潤滑油は本当のところ何を使用すればよいのか分かっていない、又は巡り合えていないユーザーが多いことがわかりました。そこから見えてきたのは「誰もが安心して使用することができるスバル専用のオイル」を開発することです。
ターボエンジン、NA、新車、過走行車両、サーキット、ジムカーナ等あらゆる車の走行条件を研究し、5年の歳月をかけて理想のオイルを開発することができました。
その結果、耐摩耗性もアップし純正の同等商品を比較すると、半分以下に抑えることに成功しています。また走行距離20万キロを超えるインプレッサであっても高回転域まで回すことができ、パワーアップさせることが実証されました。
オイルの性能を決定するのは、ベースオイルだと考えています。そのためエンジンやギヤ、オートマチックのパーツ一つひとつを保護するためには、全グレードに100%化学合成油を使用しました。
ロスポーツ(ZERO SP)がベースオイルに対して考える条件は以下になります。
- 低粘度化を抑える
- 熱安定性に優れる
- 高温時のスラッジの発生を抑える
- 燃料希釈や高温時であっても油膜を保持する
- なじみが良い
- フリクションを減らし、燃費性能を向上させる
これらすべての条件を満たし、さらにチタニウムをブレンドしました。その結果として、酸化防止性能が今まで以上に厳しくなったAPI規格、SN規格をクリアしています。
オイルに重要なものは、ほかに「油膜保持能力」と「摩擦抵抗の低減」です。ゼロスポーツ(ZERO SP)は、この2つの特徴を持つ特殊なオイル成分の分子を使用することに成功しました。高品質なベースオイルに使用されるエステルの20分の1の大きさになります。
つまり通常のベースオイルが入り込むことのできない金属パーツの細部にまで、強靭な油膜を形成できるのです。一般的なオイルはニュートンの法則に従い、力が加えられた方向にだけオイルが動きます。
非ニュートン系に属するゼロスポーツ(ZERO SP)のオイルは力が加えられた方向以外にも動くことができるのです。そのため、金属に対して常にオイルが絡みついている状況を維持することを可能にしています。
非ニュートン系で得られる効果は以下になります。
- ピストンクリアランスが正常に保たれ、高負荷時の吹き抜けを防止することでパワーアップを図ることができるだけでなく、ピストンとシリンダーの壁の隙間から漏れ出す気体であるブローバイガスも減少することが期待できるでしょう。
- ゼロスポーツ(ZERO SP)は、通常のオイルよりも流動抵抗が小さくなっています。そのため同じ油圧でも流量が増加しますが、オイルラインの細くなった箇所でも抵抗を受けることなく流量を維持することが可能になりました。
- クッション性能が高く、摩擦を減少させることができます。油膜が均等に保たれることで、回転軸であるカムの回転を妨げることがなく、振動が無くなります。それはエンジンノイズを減少させることに繋がり、体感することを可能にしました。
- オイルの劣化とは、元となるベースオイルの劣化よりも製造時に添加される添加剤から始まります。つまりベースオイルのグレードを下げることで、低価格になればなるだけ添加剤に頼ることとなり、オイルの寿命を縮めることになるのです。
ゼロスポーツ(ZERO SP)は耐泡立ち性、耐酸化性、流動点の少なさに優れた粘弾性を持つ成分を使用することで添加剤の量を少なくすることを可能にしています。また高品質なベースオイルを使用することで、オイルの寿命を保つことができるのです。
ゼロスポーツ(ZERO SP)のエンジンオイルの評判
オイルの詳しい性能が分かってくると、ユーザーからの評判が気になるところです。
インプレッサユーザー
交換直後は変化を感じませんでしたが、50㎞、100㎞と走行していくうちに徐々に回転フィールが良くなり、7,000回転までスムーズに吹け上るようになりました。エンジンの回転が滑らかで静かになり、燃費にも期待ができそうです。
レガシィユーザー
以前はアクセルを開けてから加速するまでにワンテンポのズレを感じることがあり不満を感じることがありました。「ZERO SP チタニウム NA」を使用したところ、全域での回転フィールが良くなり、無駄にアクセルを開けることがありません。燃費も向上して、とても満足しています。
フォレスターユーザー
他社メーカーのオイルを使い続けていて、レスポンスはよくてもトルクが付いてこないことに不満を持っていました。ZERO SP はいい。エンジンの滑らかな回り方、信号待ちでのアイドリングの気持ちよさに加え、青でスタートするときはさらにいい気分にさせてくれます。回転にトルクが付いてきて、ブーストもかかるとは、次ももちろんこのオイルを使用する予定です。
インプレッサユーザー
- 過走行のためかシリンダーとピストンリング間のクリアランスが増し、圧縮漏れを示す兆候がありました。オイルキャップを外すとブローバイガスが噴き出ていたので、非ニュートン系粘弾性に優れたオイルを試したいと考えたのです。
- ZERO SPを使用して驚きました。キャップを外してもブローバイガスは一切出てきません。もちろんエンジンのポテンシャルは発揮されています。もし同じ症状が出ているなら、一度試してみる価値はあると思いますよ。
ゼロスポーツ(ZERO SP)と他社のエンジンオイルの違い
水平対向エンジンは、構造上ピストンとの気密性を保ち、滑らかにするためのシリンダーライナーの上部は油膜切れが起こりやすい傾向です。またピストンの下の方の台形になって少し大きくなった部分のピストンスカートとも接触がおこりやすくなっています。
もう一つの問題点として、クランクシャフトが短いエンジンでありながら、クランクメタルが細いため、より強靭な油膜を必要とする構造です。
ロスポーツ(ZERO SP)は水平対向エンジンのウィークポイントをカバーするために研究されてきました。
ゼロスポーツ(ZERO SP)と他車との決定的な違いは、「ナノレベル球状チタニウム」の使用にあります。通常のオイルに使用されるチタニウム成分は、エンジンの内部をコーティングするためのものです。
しかし、ナノレベル球状チタニウムは、抵抗の減少を抑え潤滑性能の向上を図ります。摩擦抵抗を転がり抵抗へと変化させることができるため、発熱を抑えベースオイルの熱劣化を防止することを可能にしました。
ナノレベル球状チタニウムの粒径は21mmナノメートル以下の小さな粒子であり、丸い形状をしています。その形状がベアリング効果を生み、レスポンスを向上させることに成功しています。
ナノレベル球状チタニウムを使用することで摩擦抵抗低減性能を高めることに貢献し、水平対向エンジンをより高いポテンシャルへと引き上げることができるといえるでしょう。
ゼロスポーツ(ZERO SP)のエンジンオイルの種類と性能
ゼロスポーツ(ZERO SP)のラインアップを詳しくご紹介していきます。
ZERO SP エステライズTS エンジンオイル5W-55
価格
性能
エステライズシリーズには、摩擦抵抗を減らしオイルの間に入り込んでクッションの役割を果たす「ホワイトエステル」と摩擦低減効果の高い有機モリブデンを配合しました。この2つの効果で高温時でも、十分な潤滑性と摩擦軽減を確保します。
ベースオイルに配合されているのはアルキルナフタレンで耐酸化性、耐熱性を持つとともに添加剤性能を高めることを可能にしました。また添加剤性能を高め、エンジン内部の清浄性を維持することも可能にしています。
新たに採用された3次元分子構造のメタロセンPOAは、せん断安定性、酸化安定性を強化することができました。また低速の早い段階で着火する「LSPI」の原因を防ぐマグネシウム系添加剤を配合しています。
水平対向エンジンのハイパワーターボ車専用に開発し、さらに新規格となるAPI SN PLUS GRADEにも対応したオイルです。
ZERO SP エステライズTS エンジンオイル 5W-40
価格
性能
水平対向DITエンジン専用に開発されました。Direct Injection Turbo(ダイレクト インジェクション ターボ)、略して「DIT」は直噴ターボのことです。全ての筒内に直接噴射する方式ですが、このDITエンジン用に登場したオイルになります。
街乗りからワインディングまで幅広いシチュエーションに対応可能です。どんな場面でも気持ちの良いフィーリングを体感することができるでしょう。
ZERO SP エステライズS エンジンオイル 2.5W-30
価格
性能
水平対向の中でも自然吸気エンジンオイルとして、新たに開発されました。エステライズ効果がよりパワーアップ、トルクアップやレスポンスの向上を体感することができます。金属の直接接触を抑制することで耐摩耗性がアップしました。
NAでもストレスなくスポーツ走行を楽しむことを実現させます。
ZERO SP チタニウム Titanium R 10W-50 SNGRADE
価格
性能
ハイパワー車の高負荷走行にも対応したブレンドを施したオイルです。高回転までスムーズに回るだけでなく、その圧倒的なパワーやハイレスポンスに驚くかもしれません。特にインプレッサ ターボにおすすめです。
ハイパワーターボ車両以外にはエンジン保護の目的から旧車や過走行車両にも適しています。またスポーツ走行を目的としている場合や、外気温の高い夏季にはオイルの寿命が短くなるためピッタリといえそうです。
ZERO SPチタニウムTB Titanium TB 10W-40 SN GRADE
価格
性能
ターボ車両のオールシーズンに対応するスタンダードオイルとして開発されました。10Wとは思えない回転フィールとレスポンスを楽しむことができるでしょう。なおハイパワー車両の冬季使用、過走行車やNAにも広く使用可能です。
ZERO SP チタニウムTitanium NA5W-30 SN GRADE
価格
性能
省燃費性能に優れた性能を発揮しながらレスポンスの良さを実現した、水平対向NAエンジン専用のスポーツオイルです。一般的な交換の走行目安としては5,000㎞ですが、サーキット走行などを含む送付過走行を行う場合には、早めに交換することを忘れないようにしてください。
まとめ
スバル車を専門に開発を行う数少ないメーカーのゼロスポーツ(ZERO SP)には、電気自動車を製造する高い技術力があります。残念ながら現在は電気自動車事業から撤退していますが、さまざまなノウハウはオイルの研究開発に活かされているといえるでしょう。
スバル車のパフォーマンスを最大限引き出すために使用されるのは、ホワイトエステルをはじめナノレベル球状チタニウムなどです。これは水平対向エンジンの油膜切れが起こりやすい構造を見事にカバーすることに成功しました。
スバルの品番を獲得しているゼロスポーツ(ZERO SP)は、全てのパーツに精通する研究が行われている結果といえるでしょう。スバリストはもちろんのこと、一度は試してみる価値があるのではないでしょうか。