水洗いのみで良いと言われているコーティングですが、本当にその通りなのでしょうか?コーティング作業も手掛ける、鈑金塗装のプロがコーティング車の洗車方法についてアドバイスをしていきます。

スポンサーリンク

1. コーティング後の車も洗車は必要!

ノーメンテナンスを謳うコーティングも存在しますが、ノーメンテナンス=ノー洗車という意味ではありません。残念ながらコーティング後も洗車は必要です。

とは言え、もしも高品質のコーティングを施工したなら当分の間は洗車がラクになるでしょう。基本的には水洗いでなんども輝くボディーを楽しむことができます。

さっそく、コーティング車両の洗車について詳しくみていきましょう。

1-1. 洗車をすることでコーティングを長持ちさせる

ボディーにダメージを与える要素は実に多く存在しています。例えば、鳥のフンです。鳥のフンは酸性もアルカリ性も存在し、しかも強烈な場合が多くあります。そのため、コーティングが負けてしまい、跡になってしまうこともあります。

コーティング剤にはさまざまな種類が流通しています。一概に良し悪しを断言することはできませんが、それぞれの製品が抱える弱点が隠されていることがあるので注意も必要です。

どのような環境に弱く、剥がれる理由があるとしたらどんな理由なのか?しっかりと吟味し対策をねることでコーティングの寿命を伸ばすこともできます。

コーティング剤によって洗車の方法も指定されることがあります。洗車方法についても採用するコーティング剤のガイドラインにはしっかり目を通しておきましょう。

1-2. 水洗いだけで良いのか?

高品質のコーティング剤であれば、基本的には水洗いのみで問題ありません。水洗いで落ちない汚れがあるとすれば、ピッチ・タール、鉄粉、そして虫汚れなどが考えられます。これらの汚れには専用の洗浄品や方法で除去することが可能です。

"あわせて読みたい!"
とくに線路沿いや工業地帯には多くの鉄粉が微粒子となり舞っています。これら鉄粉がクルマのボディーに突き刺ささっています。除去する方法をまとめていますのでご参照ください。

洗車で鉄粉除去するために必要な道具とおすすめの方法

車の鉄粉取りの特徴と使い方の全手順を動画付きで詳しく解説

業者に洗車を行ってもらう場合には、シャンプーを使用しないで水だけで洗車をする方も見かけますが、これはどちらでも構いません。洗車時に使用する泡には塗装やコーティングに悪影響を与えるような添加物は有しておりませんが、注意しておきたいポイントもいくつかあります。

2. コーティング車を洗車する際の注意点

  • 水洗い
  • シャンプー使用時にはしっかりシャンプーを落とす
  • コンパウンド入りシャンプーやワックスはNG

シャンプー洗車は、泡切れがわるかったりボディーに残ってしまうことで汚れの原因になりがちです。ミラー下やトラングやハッチバックの下に伸びる黒いスジはシャンプー洗車をした車によく見られます。

また手洗いの泡洗車も、泡で汚れが見えなくなるため泥に気づかずゴシゴシとされるとキズがつくことがあります。

そのほか、コーティング車へのワックスがけは汚れを促すことにもなりますし、知らずにコンパウンド入りのもの塗り込むことでキズの原因にもなります。

コンパウンドは磨き粉ですので、使用してしまえば弱いコーティングであればすぐに剥がれ落ちてしまうでしょう。

2-1. 自分で洗車する場合の注意点

・自宅で洗車する場合

風の強い日、炎天下での洗車は避けましょう。可能であれば曇り空の無風状態がベストです。最低でもそよ風程度の微風の日を選んで洗車してください。風が強ければ砂が舞い、拭き上げの際にクロスへ砂が噛んでしまいますので、キズの原因となるからです。

特に黄砂の季節には注意が必要です。常に大気中に砂が舞っていますので、水でしっかり洗い落としたとしても、砂がボディに着地している可能性大です。拭き取りなどもやさしく撫でるように心がけましょう。

硬度の高い頑丈なコーティングを施工している場合にはキズがつきにくいのでもう少し気楽に洗車を楽しめます。

水圧でボディーの汚れを落とせるケルヒャーなどの高圧洗浄機が心強い味方になってくれます。

・コイン洗車場で洗車する場合

こちらも同様に、風や日差しの強い日は避けるべきです。機械洗車は極力避け、手洗い洗車をおすすめします。機械洗車は設計上、洗い残しが少なくなるように非常に強力な力でゴムの束を打ち付けています。

本来は撫でる程度で落ちる汚れを必要以上の力を加えて落としているのですから、もちろん塗装面には大量のキズが発生しても仕方がありません。

中にはキズがつきにくいとされるマシンもあるのですが、しっかり洗えているのかわからない上にキズのリスクは常にあります。

2-2. 業者に洗車を依頼する際の注意点

・ガソリンスタンドの場合

キズのリスクは洗車機においても、手洗いにおいてもあると考えていたようがよいでしょう。手洗い泡洗車でさえもそのリクスがあります。

またガソリンスタンドの設計上、炎天下での洗車になることもあります。気になる場合には極力屋根下やピット内で作業が可能か確認してみましょう。

・洗車専門業者の場合

基本的にはガレージのような場所で作業をしますので、風や太陽の影響を受けにくいです。専用ビニールブースなどの設備が設置されている場合もあります。

こちらの業者は、基本的には回転率重視ではなく、一台一台しっかりと洗車をしていくタイプですので、機械洗車を導入している業者は少ないでしょう。

その分費用はかさみますが、洗車の際に使用した水の拭き残しが少ないなど、丁寧な作業が利点です。

2-3. 共通する注意点

自分で洗車、業者が洗車、どちらも必ず発生することは、「洗車の際に使用した水の拭き残し」です。

拭き残しと言うと語弊があるかもしれませんが、いたるところに水が溜まってしまいます。

ベルトモールやウェザーストリップ、ドアの水抜き穴、ドアミラーなどが代表的ですが、これを防ぐためには拭き上げ完了後に車を放置しておくことが最も良策です。

拭き上げが完了し、外から見ると綺麗な場合でも走行すると水が流れてきます。エアーなどで除去したつもりでも、走行すると水が流れ出てきてしまいます。筆者は自動車鈑金塗装の仕事をしておりますので、水は塗装にとって大敵です。

このような場合には次の日まで放置し、翌日に塗装作業を行うか、水の溜まる部品を全て外し、パネルのみにして水を除去します。放置しておく時間は、夏は2、3時間、冬は半日程度が目安となります。

スポンサーリンク

3. コーティング車の洗車方法と手順

洗車方法を順に解説していきますが、ご自身で全ての作業を行うのは手間がかかるので、重要なポイントを「⭐️」で示します。時間が限られる方や初心者の方は「⭐️」が付いている作業だけでも十分メンテナンスができます。

  1. ホースを使用し車全体に大量の水を掛け、ボディを冷やす
  2. 水でボディーの砂・泥汚れを洗い流す⭐️
  3. ドアの隙間など、洗いにくい箇所へ集中的に水をかける
  4. セーム布と乾いたクロスを用意して拭きあげていく
  5. 乾いたクロスでガラスを拭き上げる⭐️
  6. ドアなどのパネルの内側の拭き上げ
  7. 各モール類などの入り組んだ箇所の拭き上げ
  8. 放置する⭐️

今回モデルケースとして洗車環境を設定した上で解説していきます。

洗車環境 自宅
屋根なし
曇り
温度 20〜30度程度
湿度 50%程度
洗車方法 水洗い

① ホースを使用し車全体に大量の水を掛け、ボディを冷やす

コーティング剤によっては熱で柔らかくなる溶剤もあります。そうした柔らかいコーティングは特にキズがつきやすいため、ボディを冷やしコーティングを締めておきましょう。完全硬化はしていますが、物質は熱により軟化します。

使用する水は、バケツなどの少量の水ではいけません。洗車で水道代を節約していては、いつまでもたってもボディの温度は低下しないので、次工程にも悪影響を与えます。

② 水でボディーの砂・泥汚れを洗い流す⭐️

洗車は上から下の順番で洗うのが基本です。足を先に洗っても、頭に汚れが残っていればやがてその汚れはせっかく洗った足に付着してしまいますからね。

拭き取りのクロスにはマイクロファイバークロスをおすすめします。水で砂や泥汚れを洗い流したら、マイクロファイバーでやさしく撫でるようにして拭いていきます。このときしっかり水を含ませておいてください。砂や汚れをキャッチするのでまめにクロスを洗い丁寧にボディー汚れを拭き取ります。足回りやボディー下を拭くときは別のクロスを使用します。特に砂や泥が混じりやすいため、ボディー用のクロスと分けて使うことでキズを予防します。

水はどんな状況でも表面張力が発生しますので、大量の水を使用することによりクロスが浮き、同時に砂を洗い流してくれます。濡れてしまうことを恐れないくらい、思い切り水を使って洗車していきましょう。

高圧洗浄機を使う利点として、すくない水で必要なパワーを発揮できることがあげられます。水の節約にもなり洗車アイテムとしては重宝します。

③ ドアの隙間など、洗いにくい箇所へ集中的に水をかける

ドアを閉めた状態で「ジェット」などの勢いの良い水流を選択し、水をかけましょう。

この際に、ベルトモール、アウターハンドル、バンパーの隙間など、各モール類の水が溜まりやすい箇所にも集中的に狙っていきます。中に入り込んでいる汚れを水流で搔き出す要領です。洗車後の拭き取りではクロスが入らないため、この段階で完了させてしまいましょう。

④セーム布と乾いたクロスを用意して拭きあげていく

必ずしもセーム布を使用しなければならないことはありませんが、セーム布は常に大量の水分を含んでいるため、非常にキズになりにくい性質があります。

セーム布がない場合でも、マイクロファイバークロスが活躍します。大量に持っておいてもよいでしょう。吸水用のマイクロファイバーは最初に水洗浄で使ったときのものとは別のものを用意しておきます。なお、拭きあげる手順は洗うと一緒で上から下です。

ボディの中で最も高温になるのは、屋根とボンネットですからまず手の届きにくい屋根を拭き上げ、次にボンネットへ移ります。この際に、セーム布(マイクロファイバー)を手前に引くように拭き上げるとキズになりにくいうえ、拭き取りも楽になるでしょう。

これは、手を前方に押し出すことにより体重がかかってしまい、力が均等に加わらないため、スムーズに拭き取りが出来ません。手前に引くことで自然と体が後ろへ下がるので、気に留めることなく力が均等に加わります。

次は右回り、左回り、お好きな方で拭き上げてください。

フェンダーにあるウインカーやドアのハンドル、モール類など、まずは気にせずに、見える箇所だけ拭き取って行きましょう。

⑤ 乾いたクロスでガラスを拭き上げる⭐️

セーム布でガラスを拭いてもスジ状に残ってしまい、綺麗に拭き取ることが出来ません。ガラスが若干塗れている状態で乾いたマイクロファイバークロスで拭くことにより、綺麗に拭き取れます。

室内側の窓を拭くときも同様ですが、塗れたタオルと乾いたタオルがあればスジにならなく、綺麗に拭き取ることが可能です。


"あわせて読みたい!"
窓らガラスの内側をきれいにする方法をまとめています。必要アイテムから曇った時の対処法まで詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。

車のフロントガラス(内側)汚れはこれで完璧!ムラも曇りもない方法

⑥ ドアなどのパネルの内側の拭き上げ

ドアを開けた際、ウェザーストリップ外側に大量の水が残っています。本来であればセーム布を使用して拭き上げたいのですが、セーム布は入り組んだ箇所の拭きあげは不得意です。乾いたマイクロファイバークロスで構いません。

別の方法としては、カー用品店などで販売されているワックスを大量に含んだ布を使用すると良いでしょう。

⑦ 各モール類などの入り組んだ箇所の拭き上げ

ここまで作業が終わり、先ほど拭き上げた外周を見てみると水が流れ落ちているはずです。このまま放置してしまえば痕になりますので、拭き上げていきましょう。

セーム布(or マイクロファイバークロス)を開いた状態で、狭い隙間へ入れていきます。ジワーっと水が浸透しますが、これをぐるりと3周ほど繰り返しましょう。水が落ちてこなくなったら次の工程に移ります。

⑧放置する⭐️

これで最終工程です。パネルを全て開き、放置しましょう。

ドアを閉めていれば水抜き穴から水が流れ落ちてしまい、サイドシル上部に水溜りが出来てしまいます。ボディ外側なら気付きやすいですが、内側は見逃しやすいので必ずドアは全開にしておきましょう。始めの一時間は10分おき程度に水の滴りが無いか確認し、無くなれば数時間放置します。ドアを開けている間は、車内灯はOFFにしておきましょう。バッテリー上がり防止のためです。

これで洗車完了です。

4. まとめ

コーティングを施している車は水洗いのみで良いですが、柔らかいコーティングを施工している場合には特に機械洗車はキズのリスクがつきまといます。手洗いでの洗車がおすすめです。

キズが付けばコーティングは剥がれてしまいます。自ら洗車を行う場合でも、業者に依頼する場合でも、水の拭き残しはコーティングへ大きなダメージを与えることがあります。

ダメージを受けやすいコーティングを施工している場合には、コーティング後の扱いには十分に注意が必要です。

洗車をラクにする目的でコーティングをする場合には、施工前にコーティングの効果や主成分、弱点などしっかり見極めておくことが肝心です。

スポンサーリンク
おすすめの記事