愛車の塗装にDIY挑戦をしてみたいと思う人が増えてきています。やってみたいと思う反面、失敗したらどうしよう?という不安がある人も多いようです。
車全体を塗装しようとすると、それはなかなか大変です。そういうことが好きであれば別ですが、そうでなければ業者に頼む方がいいでしょう。
しかしそんなに広範囲ではなく、プロ並みの出来を求めないのであるなら、部分的な箇所など自分で修理やスプレー塗装をすることも可能です。
実際に始める前に、どういう手順なのか、何が必要か?など、下地処理や塗装についてちゃんと知っておけば、自分でするのも楽しくなります。
ここでは自分で下地処理と塗装をしてみたい人に向けて、その方法を書いていきます。
1. 自分で塗装する?それとも業者に任せる?
まず自分でするのか?業者にまかす方がいいのか?
そのメリットとデメリットについて書いていきます。
1-1. 自分で下地処理と塗装をするメリットとデメリット
自分で行うことの一番のメリットは費用が安くなることでしょう。そしてデメリットは手間がかかることです。
部分塗装は自分の家のガレージでもできますが、全塗装となれば、そういうわけにはいきません。どこかでレンタルガレージを借りる必要があるでしょう。
また、思ったように仕上がらない場合もありますので、そういうこともありうると思っておいた方がいいでしょう。
それほど手間と労力をかければ、愛車に対しての愛着も湧き、うまくできたときはすごく満足感が得られ、誇らしく感じます。
行う前にしっかりと前知識を入れておいて最低限のことを知っておきましょう。最初は小さな箇所で試してみて、うまくいくようなら大きな部位に対しても行うと間違いも少なく、安心です。
1-2. 自家塗装での注意点
塗料スプレーは、カーショップやホームセンター、ネットショップなどで簡単に購入できます。手軽に自分でも車に塗装をすることができるようになり、DIY塗装をする人も増えています。
もし塗装がうまくいかなかったとしても、業者に頼めば大丈夫だろうと気楽に考えてしまいがちです。万が一自分でやってうまくいかなかくて、業者に再塗装を頼むとなると割高になってしまいます。なぜなら自家塗装された面を一度剥がして、下地処理を施してから再塗装をすることになりますから。そうなると塗装面を剥がす分の料金が余計にかかってしまいます。
安くあげようと自家塗装したのに結局割高になってしまった、なんてことにならないように気をつけましょう。
自分で塗装する場合に気をつけておきたいことは、まず下地処理をしっかりとやることです。
下地がきちんと処理されているかいないかで、塗装の出来具合も変わってきます。
1-3. 塗装を業者にまかす場合のメリットとデメリット
業者に頼むことを躊躇する一番の理由は費用が高くかかることでしょう。
全塗装は20万から30万、40万と幅はありますが、最低でも20万円はかかるでしょう。
塗装といってもどこからどこまでやってくれるのかはピンキリです。
安ければいいというものでもなく、洗車してスプレーを吹くだけの塗装もあれば、きれいにサンダーをかけて、表面上をかなりクリアにしてから塗装をする場合もあります。
それによって出来もだいぶんと違ってきますので、金額はそれによってもいろいろ変わってきます。
また塗装をお願いする場合、数日車を預けることになるかもしれませんので、それも考慮しておきましょう。
メリットは費用はかかれど、こちらの手間がかからないことです。業者にお任せするわけですから、こちらは車を持っていけばいいだけです。
またプロに仕事をお願いしますので、ちゃんとした業者に頼んだのならしっかりとした仕上がりにしてくれるでしょう。やはり自分でやるよりは仕上がりはきれいです。
2. 塗装についてもっと詳しく知ろう
塗装に使う塗料は樹脂と顔料で作られています。ベースとなる樹脂はアクリルが主体となっているものが多いです。このアクリル樹脂に各種顔料を混ぜ合わせたものが塗料であり、車の塗装に使われています。
この塗料を使って、どのように塗装がなされているのかをここでは見ていきましょう。
2-1. 塗装の構造はどうなっているのか?
塗装は、通常、下塗り、中塗り、上塗り、クリア塗装と4層になっています。何層かに塗られますが、その膜は約0.1mm以下というとても薄い膜となっています。防錆対策と車のボディーの美しいツヤと輝きを保つためのものとなります。
下塗りは、一番下に塗るもので、防錆と、塗装面と塗装の密着度を高め、剥がれにくくする役割があります。プライマーと言われます。
中塗りは、サーフェーサー。塗装面の傷を埋め、色合いを整えます。下塗りプライマーと中塗りサーフェーサーが一緒になったものは、プライマーサーフェーサー(プラサフ)と呼ばれ、今では主にこちらが使われています。
3層目の上塗りは、ボティーに塗る色となります。車の色は3種類、ソリッドカラー、メタリックカラー、パールカラーとなります。
板金塗装でいう「色合わせ」が3層目の上塗りとなります。
顔料に微細なアルミ片や雲母(マイカ)を混ぜて、望みの色合いにしていきます。
2-2. 塗装にはどんな種類があるのか?
ソリッドカラーは、キラキラものが入っていないマットな感じの色合い、普通に絵の具で塗ったような白や赤といった単色塗装です。顔料を混ぜ合わせる場合、どういう配合にすれば思い通りの色になるか、腕の見せどころです。
メタリックカラーは金属っぽい色合い。ソリッドカラーにアルミの銀色の微細な金属片が入っています。
パールカラーは、雲母(マイカ)を混ぜて、パールの輝きのような色合いになります。メタリックはメタリック的な金属の輝きで、こちらは高級感のあるパールの輝きとなります。
2コート塗装の場合は、3つのカラー顔料を全て混ぜて塗装し、その上にクリアー塗装します。
3コート塗装の場合は、下地処理を施した上にソリッドカラー(主に白色)を塗ります。その上にパールカラーのみを塗装すると、ホワイトパールの輝きになります。最後にクリアー塗料を塗ります。
2-3. なぜ車の塗装が必要か?
車体を錆から守るのはもちろんのこと、愛車をいつまでも美しい輝きを保ちたいですよね。しかし、車を走らせていると必ずホコリや飛び散っている鉄粉、ブレーキパッドから出るブレーキダスト、排気ガスに含まれるタール物質などが付着し、雨に降られれば、それが車体に張り付いてしまいます。
洗車をしても、表面にザラつき感が残ったり、色がくすんできて、早く汚れてしまうようになります。車体についた鉄粉やホコリに含まれた成分が酸化して塗装と混ざり合い、密着してしまいます。そうなると、カーシャンプーで普通に洗車しても完全には落ちなくなって、塗装面に残ってしまいます。
塗料に使われている着色剤には金属系の成分がたくさん含まれています。それが反応してしまいます。そうならないように、塗装最後に透明なクリア樹脂塗料を塗布して塗料の酸化を防ぎますが、弱酸性の樹脂塗料を使った場合は酸化しやすくなります。
今では酸化しにくい塗装や塗料も開発され、増えつつあります。あるいは、コーティングをしてそうなることを抑えることもできます。
2-4. 車の塗装面の酸化を防ぐ方法はあるのか?
「酸化する」ということは「錆びる」ということです。
酸化が進んでいくと、当然ながら塗装面がくすんできて、艶がなくなり、輝きが失せます。放置しておくと、塗装が剥げてきます。そうなると下地の塗料がむき出しになり、ますます酸化がひどくなっていきます。雨に降られると水分を得て塗料の酸化が進みます。
酸化を防ぐには、まず第一に洗車をきちんとすること。汚れが付着した状態にしないことが大切です。しかし、洗車でも取れない汚れもあります。それらは鉄粉除去やコーティングをすることにより酸化を遅らせることができます。
ワックスをかけるとツルツルとした表面になり、塗装のツヤが戻ったようになります。しかしそれは市販のワックスに研磨剤が入っているものが多いからです。ワックスをかけ、ザラザラしている塗装表面を削り、ワックスでツヤを出すので、表面にはわずかながら傷がつきます。
光沢を取り戻すために研磨して表面の酸化物を削りますが、ワックスによるそれは一時的です。塗装面を削って細かな傷をつけてしまうので、酸化が促進されてしまいます。
そうならないようにするためには、酸化しない塗装をすることが必要となります。これがいわゆるコーティングです。ガラスコーティングなど金属成分が含まれない塗装をすることで、より良い塗装面の保護が可能となります。
3. 車の塗装の方法にはどんなものがあるのか?
車を塗装するには、板金塗装、缶スプレー、スプレーガンを使用して行う塗装などがあります。
缶スプレー、スプレーガンは自分でも行うことができ、市販の塗料もいろいろと出回っています。
3. 板金塗装とは?
板金塗装とは、事故などで損傷を受けた車の傷やへこみ、歪んだボディーなどを、板金と塗装によって修理し、塗装し直す自動車の修復作業をすることです。板金塗装店は、傷ついた自動車を再生させるところとなります。
3-1. 格安のスピード板金塗装は避けるべき?
最近は、簡単な見積もりで、早く塗装をしてくれる格安板金塗装が増えてきています。スピード板金塗装は早く仕上げてもらえるという利点はありますが、出来があまり良くないことがあります。格安になっているのは、手順や人件費を削ってのことなので、一旦きれいになっても長続きしない場合があります。
車のオーナーは早く直してほしいという思いがあるでしょうが、早さよりも出来上がりの良さを重視するようにしましょう。板金塗装は手間を抜いてしまったらいい塗装にはなりません。
スピード板金塗装を格安でお願いしたら、直ったと思った塗装が浮いてきて、結局、また再塗装をしなくてはならなくなったりします。
大きな修理工場で、熟練したプロのスタッフが大人数関わることができれば、早くてもきれいな仕上がりもできるでしょうすが、スピード塗装をうたっているところは下地処理などを簡単に済ませているかもしれません。
せっかく塗装をしてもらうのであれば、早さを求めるよりは丁寧さを求める方がきれいに仕上がりますし、いい状態が長持ちもするでしょう。車1台1台、愛情を込めて修理をしてくれるお店の方が丁寧に仕事をしてくれます。こちらも気持ちよく対応できます。
3-2. 塗装の修理代金はいくらぐらい?
これは一概に言えません。車種やへこみや傷の状況などによっても見積もりは変わってきますし、部品を交換しなくてはならない場合、その費用もあります。その店がどこまでやってくれるのかによって、見積もり金額は変わっていきます。
頼む前に、しっかりと話をして、いくらでどこまでやってもらえるのかを知っておきましょう。そして、自分の必要性に応じて適切な修理プランを立てることで、余分なお金をかけずに修理することができます。
4. 車を塗装する前の下地処理について
きれいな仕上がりを求めるのであれば、下地処理は必要です。下地処理をしておかないと、すぐに塗装が剥がれたり、きれいな艶が出なかったりする原因になります。
まず修理箇所にどのような作業が必要なのかを見極めます。修理したいところを見て、コンパウンドで磨くことで直るキズなのか? 凹凸ができていてパテなどが必要か?などを見ていきます。
ここでは一般的な下地処理のプロセスをお伝えしますが、必要に応じて作業をしていきます。
- 水洗いをします。
- サンドペーパーで下地の研磨をします。
- 脱脂をして油脂分を取り除きます。塗装面に脂分が残っていると、パテや塗料が剥がれる原因となりますので、きちんと拭き取っておきましょう。
- 下塗りのプライマーを塗ります。
- パテが必要であれば、パテを塗り、その後サンドペーバーで研磨します。
- 脱脂後、マスキングをしてプラサフを塗ります。プラサフは一度に厚塗りをせず、数回に分けて塗ります。
- 乾燥したら、マスキングを取り、プラサフ部分と周囲が違和感なくなるよう、研磨していきます。段差にならないよう、気をつけましょう。
- 細目のコンパウンドで仕上げの磨きをかけます。
- 念のためもう一度脱脂をして、塗装のためのマスキングをします。
これで下地処理が終了です。
5. まとめ
うっかり車体を傷つけてしまった時など、自分でDIY修理や塗装ができないものかと思います。部分修理や塗装であれば、自分でやってみるのもいいでしょう。
自分の車に必要なものは何か?どういう手順ですればいいのか?などを事前に知っておくことで、材料等の準備もできますし、安心して塗装することができるでしょう。
まずは小さな傷や補修箇所にトライしてみましょう。そこでやり方とコツを掴んで、大きなところにも挑戦されるなら、失敗も少なく済みます。