一昔前、ディーゼル車といえば貨物車やトラックなどが多く、一般的な乗用車に使用されることは稀でした。しかし、現在では燃料代が安く済むことや燃費が良いなどの理由から、乗用車にもディーゼルエンジンが多く使用されています。
この様に、維持費の面で多くのメリットがあるディーゼル車ですが、実際に乗っている方や検討中の方にとっては、オイルの交換時期も気になると思います。
そこで今回は、ディーゼル車のオイル交換時期と注意点についてご紹介します。
ディーゼル車のエンジンオイル交換時期の目安
まず、ディーゼル車のエンジンオイル交換時期の目安ですが次のようになります。
- 走行距離・・・5,000~10,000km
- 頻度・・・半年に1回
しかし、これはあくまでも一般的な目安で、メーカーや車種によっても違いがあります。特に、海外メーカーは交換時期が伸びる傾向がありますので、次項でメーカー別のオイル交換時期をご紹介していきます。
オイルフィルターの交換時期
フィルターの交換時期は、ガソリン車と同じ様にオイル交換2回毎に1回で良いでしょう。
ただし、オイル交換時期が長い場合には、オイル交換毎の交換が推奨されている場合もあります。そのため、オイル交換を10,000km以上しない場合は、フィルター交換もオイル交換毎に行った方が良いでしょう。
【メーカー別】ディーゼル車のエンジンオイル交換時期
メーカー | 走行距離 | 頻度 |
---|---|---|
マツダ | 5,000〜10,000km | 半年〜1年に1回 |
トヨタ | 2,500〜20,000km | 3ヶ月〜1年に1回 |
三菱 | 5,000〜10,000km | 半年〜1年に1回 |
BMW | 15,000〜25,000km | 半年〜1年に1回 |
ボルボ | 15,000〜30,000km | 半年〜1年に1回 |
メルセデス・ベンツ | 15,000km | 半年〜1年に1回 |
この様に、ディーゼル車の交換時期はメーカーによって違いがありますので、詳細を確認していきましょう。
マツダ
マツダのオイル交換時期は、通常使用なら10,000km毎、または1年に1回になります。また、シビアコンディション時は5,000km毎、または半年に1回となっています。
マツダのディーゼル車は、コンパクトカーやセダンが多いため、他メーカーと比較して排気量が小さい傾向があります。そのため、交換時期も他メーカーよりも早めの傾向となっています。
トヨタ
トヨタのオイル交換時期は、通常使用なら5,000~20,000km毎、または半年~1年に1回です。シビアコンディション時には2,500~10,000km毎、または3ヶ月~半年に1回となっています。
この様に、トヨタ車のディーゼル車は通常時とシビアコンディション時の交換頻度が大きく異なっています。
三菱
三菱のオイル交換時期は、通常使用なら10,000km毎、または1年に1回です。シビアコンディション時は5,000km毎、または半年に1回となっています。
三菱のディーゼル車は、パジェロやデリカなど乗用モデルが多い事から、トヨタ等の貨物車を扱うメーカーと比較して交換時期が短い傾向があります。
また、三菱は以前からディーゼル車を多く販売しているため、ディーゼルに対する技術も高いので、これらの交換時期を守っていれば故障の心配も少ないでしょう。
BMW
BMWのオイル交換時期は、通常使用なら25,000km毎、または1年に1回です。シビアコンディション時は15,000km毎、または半年に1回となっています。
ドイツ車を含めたヨーロッパ車は、環境問題対策のため、できる限りオイル交換回数を減らしています。オイルそのものもロングライフのものが使用され、エンジンもそれに合わせて設計されていることから、国産車と比べ交換時期が長くなっています。
ただし、ヨーロッパと日本では交通事情が大きく異なります。例えば、日本では近所のコンビニに行くのにも車を使うことが当たり前ですが、ヨーロッパでは長距離の移動がメインとなります。この様に、ヨーロッパではシビアコンディションが少ない事も交換時期が長くなる理由の1つとなっています。
そのため、日本でヨーロッパ車を使用する場合は、通常使用時の交換時期では無く、シビアコンディション時の交換時期でオイル交換を行う必要があります。
ボルボ
ボルボのオイル交換時期は、通常使用なら30,000km毎、または1年に1回です。シビアコンディション時は15,000km毎、または半年に1回となっています。
こちらもBMW同様、オイルの交換時期が非常に長くなっています。しかし、日本で使用する際には、基本的にはシビアコンディション時の交換時期に合わせた方が良いでしょう
また、ボルボもロングライフオイルを純正で採用しています。そのため、交換頻度も長くなりますが、市販オイルを使用すると交換時期は短くなってしまうので、注意が必要です。
メルセデス・ベンツ
メルセデス・ベンツの交換時期は15,000km毎、または半年~1年に1回と、他の海外メーカーと比べると短くなっています。オイル性能や耐久性が低いと思われるかもしれませんが、これは日本での使用を前提とした交換時期となっているからです。
また、ボルボ同様、ロングライフオイルを純正で採用しているので、市販オイルは使用しない方が良いでしょう。
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ディーゼル車のエンジンオイルの選び方
ディーゼル車のエンジンオイルは、ガソリン車と共通しているSAE(アメリカ自動車技術者協会)粘度規格、エンジンオイルの性能を示したAPI(米国石油協会)規格、日本のJASO(日本自動車技術会)規格、ACEA(欧州自動車工業会)エンジンオイル規格などによる表記で品質を確認する事ができます。 統一されておらず非常に複雑ではありますが、SAE粘度規格とグレードの表記を確認する事で、エンジンオイルの性能を確認するという事です。
粘度
粘度は〇〇W-〇〇などと表記され〇の部分には、それぞれSAE規格に基づいた温度区分による番号が記載されます。 エンジンオイルは温度による影響を受けやすく、温度が低くなると硬く(ネバネバに)なり、温度が高くなると柔らかく(サラサラに)なる特性があります。この両方の温度域で、エンジンオイルとしての性能を維持できる温度の指標となるのが、SAE粘度の規格による表示です。 Wの左側には低温を表しており、日本国内であれば、
- 0W(-35℃)
- 5W(-30℃)
- 10W(-25℃)
- 15W(-20℃)
などが使用されています。 Wの右側のハイフン以降の数字は高温を示しており、それぞれの温度区分ごとの100℃における動粘度を示しています。それぞれ、
- 20(5.6~9.3mm2/s)
- 30(9.3~12.5mm2/s)
- 40(12.5~16.3mm2/s)
- 50(16.3~21.9mm2/s)
- 60(21.9~26.1mm2/s)
などと表記されています(記載は20~60などの番号表記のみ)。
規格(グレード)
JASO規格
規格(グレード)についての表記は、アメリカのAPI規格では国産ディーゼル車に対応していない事から、2001年新たにAPI規格に必要項目を追加したJASO規格が制定されました。このJASO規格によって、
- 乗用車用:DL-1
- バスやトラック、貨物用:DH-1およびDH-2
このように表記されています。
ACEA(欧州自動車工業会)エンジンオイル規格
また、一部国産車や欧州車については、ACEA(欧州自動車工業会)エンジンオイル規格によるグレード表記がされている場合もあります。ディーゼル乗用車の普及が進んでいる欧州エリアのACEAエンジンオイル規格だけあって、グレード分類は細分化されたり必要に応じて改正されたりと、複雑な分類となっています。 ACEA2020(2020年の新規格)ではガソリン・軽荷重ディーゼルエンジン用ではA3/B4、A7/B7と記載されます。A1/B1、A2/B2、A3/B3、A5/B/5といった破棄された分類もあるので、メーカーがこれらを推奨している場合は、現在のカテゴリーで相当するエンジンオイルを確認する必要があります。 排ガス対策装置装着車用では、
- C2(リン0.09mass%以下、硫黄0.3以下、硫黄灰分0.8mass%以下)
- C3(リン0.07~0.09mass%以下、硫黄0.3以下、硫黄灰分0.8mass%以下)
- C4(リン0.09mass%以下、硫黄0.2以下、硫黄灰分0.5mass%以下)
このように分類され、C1、C5カテゴリーは破棄され、C5カテゴリーの上位互換に当たるC6カテゴリーを導入予定です。 割愛しますが、これらの他に高負荷商用車のEカテゴリーが存在します。 現在のディーゼルエンジンオイルは、JASOとACEA、API規格を用いて表記されています。 ディーゼルエンジンオイルのAPI表記はCA、CB、CCなどと、アルファベットCから次に続くアルファベットの順に性能が良くなっていきます。また、F以降はCF-4、CG-4と数字が付いていますが4サイクルという意味です。
ディーゼル車のエンジンオイル交換時の注意点
ガソリン車用オイルを使用しない
ディーゼル車用とガソリン車用のエンジンオイルは、粘度はそれ程変わらないため、同じように使用できるのでは無いか考える方も多いと思います。
しかし、実際にはエンジンオイルの成分が異なっているので、ガソリン用オイルを使用すると、すぐにオイルが劣化してしまったり、エンジン内の洗浄ができず故障してしまう可能性があります。ディーゼル車にはディーゼル用のエンジンオイルを使用しましょう。
また、ディーゼル用オイルには大型車用と小型車用があります。大型車用は、トラックやバス等に使用される物で、万が一小型車に使用してしまうと、DPFと言う排気ガスの洗浄装置に不具合が起きてしまう可能性があります。DPFは不具合が起きると、走行不能となる事もあるので、使用するオイルには十分に注意しましょう。
輸入車の場合は、純正オイルを使用する
メーカー毎の交換時期でもご紹介した様に、輸入車はエンジンオイルの交換時期が長くなっている事が多いです。これは、エンジンの仕様やオイルがロングライフに対応しているからです。
そのため、輸入車に純正以外のエンジンオイルを使用してしまうと、オイル交換時期が短くなったり、洗浄効果が低下してしまう等の可能性がありますので、極力純正オイルを使用した方が良いでしょう。
オイル点検時、汚れと量の多さで判断しない
ディーセル車は、DPFと言う排気ガス洗浄装置が取り付けられていることから、オイル量が増えることがあります。
ガソリン車では、「レベルゲージの上限にオイルが来ているから、問題なし」と判断することができますが、ディーゼル車では、「レベルゲージ上限にオイルが来ているから、交換時期が近い」と判断する事になります。
その他、ディーゼル車はオイルも汚れやすいので、ガソリン車の様に「汚れているから交換」を行ってしまうと、かなり頻度で交換する事となってしまいます。
この様な理由から、ディーゼル車は汚れでは無く、オイル量と前回交換時の走行距離、または交換日から交換時期を判断する必要があります。
ディーゼル車におすすめのエンジンオイル7選
ここまでディーゼル車のオイル交換時期、注意点について解説しましたが、具体的にどんなエンジンオイルを選べばいいのか迷っている方に、おすすめのエンジンオイルご紹介しますのでチェックしていきましょう。
トヨタ純正:キャッスルディーゼルエンジンオイル DL-10W-30
このオイルは、トヨタのハイエースやダイナなどの普通貨物車に使用されているオイルです。純正指定である事から、信頼性も高くディーゼル用オイルとしては低粘度の0W-30ですので、省燃費性も高くなっています。
また、DPFにも対応しているため、基本的にはどの様な車種にも使用する事が可能です。
マツダ:ディーゼルエクストラDL-15W-30
このオイルは、マツダのディーゼル車にも採用されていることから、信頼性が非常に高いです。また、価格も比較的安価ですので、安く信頼性の高いオイルを使用したい方にはおすすめです。
ただし、マツダのディーゼルは排気量が小さいく低圧縮です。もちろん、オイルもそれらのエンジンに合わせて作られているため、他社の大排気量、高圧縮ディーゼルに使用すると故障や燃費低下などの症状が起こる可能性もあるので、注意が必要です。
カストーロール:GTX 10W-30
鉱物油です。カストロールの中でも超定番のオイルです。高品質なのに手頃な価格なのが人気です。「街乗りタイプ」「チョイ乗りタイプ」でも値段と品質に満足が出来るところがおすすめです。
elf(エルフ):EVOLUTION FULL-TECH LLX 5W-30
環境性能に厳しい欧州自動車メーカーの最新認証規格を取得しています。輸入車の最新テクノロジーが搭載されたガソリン車からクリーンディーゼルまで幅広く対応することが可能です。
フォルクスワーゲン、メルセデス・ベンツ、BMWなど欧州クリーンディーゼルや国産クリーンディーゼルにも対応します。
TAKUMIモーターオイル:MULTI DIESEL EXTRA 15W-40
このオイルは、国内のみならず、様々な国でも使用されています。そのため、オイルに気を遣う必要がある輸入車にも使用する事ができます。また、粘度も比較的高いため、エンジンに高負荷が掛かる高速走行などを頻繁にする方には非常におすすめとなります。
ただし、DPF搭載の大排気量車には使用できなかったり、ネット販売のみとなっているので注意しましょう。
BMW:BMW Longlife-04 5W-30」
ディーゼル車専用のスタンダードオイルです。
メルセデスベンツ純正 ディーゼル車用 エンジンオイル
ディーゼルエンジンのオイル交換に関するQ&A
ディーゼル車とガソリン車のエンジンオイルの違いは何ですか?
ディーゼル車とガソリン車の大きな違いとして、燃料の違いが挙げられます。軽油は燃焼行程で、スラッジやゴミの原因となるものをガソリンよりも多く発生させてしまいます。これらを除去する為に強い洗浄作用を付与させたものが、ディーゼルエンジンオイルです。
また軽油は硫黄含有量が多いので、エンジンを腐食させる硫黄酸化物を精製してしまいます。ディーゼルエンジンオイルには、これを中和させる洗浄分散剤として、アルカリ性物質が多く含まれています。
ディーゼル車にガソリン車のエンジンオイルは使えますか?
ガソリン車用のエンジンオイルをディーゼル車に使用した場合、ディーゼルに必要な洗浄分散性能が低いので適していません。ただし、ユニバーサルオイル(ガソリン・ディーゼル兼用)であれば、どちらのエンジンにも対応しています。
ユニバーサルオイルは、ガソリンのAPI規格とディーゼル規格の両方が記載されており、SN/CFなどと表記されます。記載のガソリン・ディーゼルの順番は、どちらのエンジンオイルを主眼として開発されたかを表しています。
SN/CFの場合、ガソリンの規格であるSNが先に記載されているので、ガソリンエンジンオイルを主眼として開発されているオイルという事になります。
ディーゼルエンジンのオイル添加剤にはどんな効果がありますか?
ディーゼルエンジンオイルには高い洗浄作用が要求され、この性能は添加剤によって補っています。他にもDPF、DPRなどの排出ガス浄化装置が採用されている車は、無灰系添加剤のようなフィルターが目詰まりを起こさない為に工夫された添加剤が使用されています。
詳しくは「ディーゼル車のエンジンオイル添加剤の効果とおすすめ5選」をご確認ください。
まとめ
ディーゼル車のエンジンオイル交換時期は、車種や使用状況により異なっています。そのため、車の取り扱い説明書を確認し、使用状況に合った時期にオイルを交換する事がおすすめです。
また、使用オイルや点検方法がガソリン車とは違うので、これまでガソリン車にしか乗った事がない方は、十分に注意点を確認した上でオイル交換を行いましょう。