車のタイヤは、タイヤ1本に対してホイールナット4〜5本で固定されています。このナットは適当な力で締め付ければ良いものではありません。締め付け力が弱かったり強過ぎたりすると様々な危険があるため、特に自分でタイヤ交換をする際には注意しましょう。
例えば、締め付けが弱いと走行時にタイヤが外れてしまうかもしれません。しかし、強く締め付けすぎてもタイヤを固定するボルトが折れてしまい、高い修理費用を払うことになってしまうなどトラブルの原因になります。
今回はタイヤ交換時の締め付けトルクについて詳しくご紹介しますので、安全なタイヤ交換ができるようにチェックしてくださいね。
タイヤ交換を自分でやるなら「締め付けトルク」を守らないと危険!
冒頭でお話しした締め付けトルクとは「ホイールナットを締め付ける力」の事です。この締め付けトルクは「N・m」の単位で表され、車種ごとに必ず決められた「規定トルク値」があります。
自分でタイヤ交換をされている方を見ていると、規程トルク値を守っていない方が多くいます。特にタイヤが外れないようにしっかり固定しようとして力任せに締め付けるのは厳禁です。
「では、どのくらいの力で締め付ければ良いの?」といった疑問を解決するのが、規定トルク値になるわけです。よくわからないと不安に感じるかもしれませんが、このあと正しい締め付けトルクについて説明するので確認していきましょう。
規定トルク値でホイールナットを締め付ける理由
ホイールナットは規定トルクで締め付ける事が重要です。その理由はタイヤの脱落防止、走行安定性の向上、ボルト折れや破損防止などです。規定トルクで締め付けていないと違反で車検に通らないという事はありませんが、何より走行安全性のために必要になります。
また、タナットの締め付けトルクが均等でないと、締め付けが弱い箇所からナットの緩みが生じてくる原因になります。そのため規定トルクで均等に締め付ける事が重要になります。
以下に、規程トルク値よりも締め付けすぎた場合、緩い場合の問題点をまとめていますので確認しておきましょう。
規程トルク値よりナットを締め付けすぎた場合
- ハブボルトの折れ
- ナットやボルトのねじ部破損、欠け
- ナットとホイール接触面の削れ、傷付き
規程トルク値よりもナットを締め付けすぎてしまった場合、このように深刻な問題になります。例えば、ハブボルト(ナットを締め付けるボルト)が走行中に折れてしまうと、即座に操縦不能となる危険があります。
また、ナットやボルトのねじ部が欠けたり破損した場合、次回のタイヤ交換時にナットが緩められなくなったり、緩める際にハブボルトが折れるなどの二次的な不具合が起こります。このような事態になると自力では外せないので、修理工場へレッカー車で運搬、ハブボルト交換などの修理費用が発生する事になってしまいます。
規程トルク値よりナットの締め付けが緩い場合
- ナットが緩み脱落する(タイヤが外れる)
- 走行時のブレ、振動
- ハブボルトの折れ
ナットの締め付けが緩くてもこのようなトラブルが生じます。最も怖いのがタイヤの脱落です。1つのナットの締め付けが緩いだけだったとしても、徐々に他のナットにも緩みが生じてきます。すると、走行時のブレや振動が大きくなり、振動に耐えきれなくなったハブボルトが折れるという非常に危険なトラブルが生じる可能性があります。
タイヤ交換時の規定トルク値と確認方法
では、適正な締め付けトルク(=規定トルク値)とはどれくらいの力なのでしょうか。車のサイズによって、以下のように違いがあります。
- 軽自動車:80〜100N・m
- 乗用車:90〜110N・m
国産車の規定トルクは108N・mとされている場合が多いですが、愛車の規定トルク値を必ずチェックするようにしましょう。取扱説明書に必ず記載がありますので、目次を見て「スペアタイヤの交換」、「ジャッキの使用方法」などのページを確認して下さい。
また、あまりにも正確なトルク値を目指す必要は無いことを覚えておいて下さい。最も大切な事は、ナット全てが適正なトルク(乗用車なら90〜110N・mの範囲)で均等に締め付けられている事です。
タイヤ交換時のトルクレンチの使い方
このような規定トルクで正しくナットを締め付けるには、トルクレンチが必要になります。しかし、使い方を間違えると正確にトルクがかかりません。誤った使用方法をすると設定したトルクよりも低い値で締め付けられてしまう為、ナット緩みの危険があるので注意しましょう。
以下にトルクレンチの使い方をご紹介しますので確認していきましょう。
- トルクレンチの取手部を回してトルク値を設定する
- 地面に対して平行になるようにトルクレンチをセットする
- 左手でトルクレンチ先端を支え、取手部を持った右手で締め付ける
- トルクレンチの取手部にゆっくり体重を乗せる感じで締め付け、「カチッ」と音が鳴ったら力を緩める
トルクレンチは取手部が回転するようになっており、本体にトルク値のメモリが彫ってあります。また、取手部の外周には「0〜9」の数値が表記され、10の位を表しています。例えばトルク100N・mと110N・mの間で外周部の目盛りを「8」に合わせた場合、トルク値が108N・mになります。
そして、トルクレンチ使用時はゆっくりと力をかけていかなければなりません。グイッグイッと反動をつけるように締め付けてしまうと誤ったトルク検知をしてしまうためです。自分の体重をジワ〜と乗せていくのがコツです。
トルクレンチが規定トルクに達すると「カチッ」と音がなりますが、これが規定トルクで締め付けた合図です。また、同時に力が逃げる感覚が手に伝わってくるはずです。規定トルクがかかった状態からも締め付ける事は可能ですので、間違って締め過ぎないようにしましょう。
おすすめトルクレンチ3選
エマーソン:デジタルトルクレンチ EM-243
TONE:プレセット形トルクレンチ T4MN140
トルクレンチ使用時や締め付け後の注意点
トルクレンチを持つ位置に注意する
トルクレンチで締め付ける時は、力をかける部分に注意しなければいけません。なぜなら、持ち位置によってトルク値に誤差が出てしますからです。短く持って締め付けた場合、規定トルクより高いトルクがかかってしまいます。一方、長くもった場合は低いトルクしかかかりません。
取手部に溝のような目印があり、その溝に中指がくるように持つのが正しい持ち方になります。
ホイールナットを締め付ける順番
ホイールナットを締め付ける際に、いきなりトルクレンチを使用するのはNGです。まずはジャッキアップした状態で、車載工具のレンチなどでナットの仮締めを行います。そしてタイヤのガタつきが無い事を確認後、ジャッキを下ろしてからトルクレンチを使い規定トルクで締め付けていきます。
ナットを締め付ける順番ですが、「対角の順番」で締め付けます。これは、全ナットを規定トルクで均等に締め付けるために重要になります。もし隣り合うナットを時計回りで締め付けていった場合、後半に締め付けたナットに正しくトルクがかかりません。
対角の順番に締め付ける例として、ナットが5箇所の場合は一筆書きで星を描くような順番で締め付けて下さい。ナットが4箇所の場合はアルファベットの「N」を書くような順番になります。
タイヤ交換後の増し締め
タイヤ交換時に規定トルクで締め付けても、走行中にわずかながら緩む場合もあるため、必ずナットの増し締めが必要になります。
増し締めは約100km走行後に行うのが基本で、トルクはタイヤ交換時と同じ設定で構いません。増し締めでは30度くらい締まる場合もありますが、全く締まらずに「カチッ」とトルクがかかる場合があります。この場合は増し締めではなく、確認の意味でチェックしましょう。
詳しい増し締めのやり方とコツは「タイヤ交換後の「増し締め」の正しい方法」こちらで解説されてていますので確認しておきましょう。
トルクレンチ使用後は設定を最小値に戻す
トルクレンチの構造として、内部にあるスプリングが伸縮することで規定トルクを出しています。作業後にトルクの設定を戻しておかないと、スプリングに長時間負荷がかかってしまい、トルク値に誤差が生じてしまいます。
そのため、使用後はトルクレンチの設定最小値に戻しておきましょう。この時、最小値より戻し過ぎてしまうと、スプリングが外れる恐れがあるので気をつけて下さい。
自分でタイヤ交換するなら「規定トルク値」を守って危険を防ごう!
タイヤ交換時に注意したい締め付けトルクやトルクレンチについて解説してきました。ぜひ今回の記事を参考にしながら、安全なタイヤ交換を行いましょう。
また、最後にタイヤ交換するために必要な他の工具類もご紹介しておきます。
- ジャッキ
- レンチ(十字レンチ)
- 車輪止め
- ウマ
詳しくは、「タイヤ交換に必要な工具と詳しい使い方」でご紹介していますので、チェックしておきましょう。