オールシーズンタイヤは文字通り1年を通して使用できるタイヤです。日本には四季があるため、冬になるとスタッドレスタイヤへの交換が必要になります。しかし比較的温暖な地域に住む人にとっては、冬だからといってスタッドレスタイヤの出番を感じる機会はあまり多くありません。
それにもかかわらず、年に2回のタイヤ交換はちょっと大変だと感じている人は多いものです。タイヤ交換の工賃やタイヤの購入費用、タイヤの保管場所など頭の痛い問題は多いのではないでしょうか?
日本ではあまり聞かれないオールシーズンタイヤですが、海外では広く認知されています。スタッドレスタイヤのように、どんな雪でも大丈夫とはいきませんが、道路がカチカチに凍ってしまうアイスバーンのような雪以外なら走行することができます。
また、高速道路も冬タイヤのチェーン規制に対応しているものも多くなってきました。
今回は、今まで聞いたことがない人や、あまり詳しく知らない人にもオールシーズンタイヤについて詳しくご紹介していきます。
オールシーズンタイヤとは?
日本には四季があるため、雪の降る寒さの厳しい冬までひとつのタイヤでカバーするということは難しいものです。そのためにスタッドレスタイヤが必要になるわけですが、地方によっては年に1~2回程度しか雪が積もらない温暖な地域もあります。
それでも冬を迎える季節には、危険を避けるためにスタッドレスタイヤの装着をして準備を整えるという人も多いものです。
もちろん豪雪地域にお住いの人にとっては、スタッドレスタイヤへの履き替えは命に直結するため重要なことになりますが、比較的温暖な地域では年に数回のためのタイヤ交換が負担だと考えている人は多いのではないでしょうか?
そんな時にオールシーズンタイヤが役に立ちます。春から秋にかけての晴雨はもちろんのこと、雪の降り始めや圧雪、シャーベット状の雪なら問題なく走行することが可能だからです。
オールシーズンタイヤの性能
そんなオールシーズンタイヤの性能をサマータイヤ、スタッドレスタイヤと比較してみましょう。
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オールシーズンタイヤ |
サマータイヤ |
スタッドレスタイヤ |
ウェットブレーキ |
〇 |
〇 |
× |
ドライブブレーキ |
〇 |
〇 |
× |
静寂性 |
〇 |
〇 |
△ |
応答性 |
〇 |
〇 |
× |
燃費 |
〇 |
〇 |
△ |
乗り心地 |
〇 |
〇 |
△ |
操縦安定性 |
〇 |
〇 |
△ |
スノーブレーキ |
〇 |
× |
〇 |
アイスブレーキ |
× |
× |
〇 |
冬 応答性 |
〇 |
× |
〇 |
冬 操縦安定性 |
〇 |
× |
〇 |
夏タイヤ、スタッドレスタイヤにおいては予測通りだったでしょうか?しかしオールシーズンタイヤの性能は、これを見る限り夏タイヤとスタッドレスタイヤのいいところを併せ持った性能があるといえるでしょう。
オールシーズンタイヤと夏タイヤ(サマータイヤ)の違い
タイヤの基本性能である「走る」「曲がる」「止まる」という部分において大きな差はありません。
しかし、夏タイヤに皆さんが求めるものが何かによって大きな差は感じられるでしょう。例えば、スポーツ走行を目的とする強いグリップ力はありません。また低燃費タイヤのような燃費性能も持っていないことが実情です。それぞれの用途によって開発されたタイヤにはかないません。
また夏タイヤと比べると、ウェットな路面での制動が少し弱いという点もあります。
オールシーズンタイヤとスタッドレスタイヤの違い
雪道でも走行が可能なオールシーズンタイヤですが、スタッドレスタイヤと比較する場合、一番の弱点は凍っている路面であるアイスバーンの制動に大きな差が生じるということです。
雪道での制動距離を計測した実験では、オールシーズンタイヤの制動距離が約14m~18mであることに対し、スタッドレスタイヤの制動距離は約13mとなっています。
冬の間、雪に覆われた過酷な地域を走行する場合には、スタッドレスタイヤが良いことは分かりますが、冬といえども晴れていれば雪の残らない地域もあります。通常のドライ&ウェットな路面をスタッドレスタイヤで走行し続けると、タイヤは傷むこともあるため、オールシーズンタイヤの方が良いといえるでしょう。
オールシーズンタイヤのメリット
オールシーズンタイヤにすることでたくさんのメリットがあります。一つずつ詳しくご紹介していきます。
スタッドレスタイヤへ交換しなくて良い
雪のシーズンが始まる頃にスタッドレスタイヤへの交換をするのはひと仕事です。通常、冬のシーズンが始まる時、そして冬のシーズンが終わる時、つまり年に2回は交換が必要です。自分で行う場合はもちろんのこと、ショップなどで予約をしたり交換の待ち時間などもあったりします。そのうえ交換工賃が必要になるため、家計の出費がかさむことになりますが、オールシーズンタイヤならこうした心配も不要になります。
突然の雪に慌てなくても良い
天気予報では1週間後の予定まで知らせてくれますが、中には急な寒波の到来でスタッドレスタイヤへの交換が済んでいないにもかかわらず雪が降ることもあります。また、他県へのドライブなどは把握しきれないこともあり、突然の雪で困ることも少なくありません。
そのようなときにオールシーズンタイヤを装着していれば、突然の降雪にも慌てることなく対応することができるでしょう。
タイヤの保管場所を必要としない
夏タイヤとスタッドレスタイヤを所有するということは、どちらかのタイヤを保管する場所が必要になります。広いスペースを確保できる場合は問題にはなりませんが、住居事情によってはタイヤ4本を保管する場所にも一苦労ということもあります。そのため、費用を払ってカーショップの保管サービスを利用したり、レンタルの倉庫を借りたりという人も多いのではないでしょうか?
オールシーズンタイヤを着用すれば、保管場所に頭を悩ませる必要もなくなります。
経済的
夏タイヤ、スタッドレスタイヤの2セットを用意するためには、それなりの金額が必要です。そのうえ性能にこだわれば価格は高くなる一方でしょう。
オールシーズンタイヤの価格にも幅はありますが、2セット分を購入するよりは価格を抑えることができます。そう考えれば、オールシーズンタイヤは経済的だといえるのではないでしょうか。
高速道路のタイヤチェーン規制でも走行可能
冬季になると高速道路の電光掲示板でよく目にする「チェーン規制」の文字があります。このチェーン規制には2種類あることをご存知でしょうか?
「すべり止め装置装着規制」と「全車両チェーン装着規制」です。全車両チェーン装着規制というのは文字通り、どんなタイヤを履いていてもチェーンを装着しなければ走行不可になります。
すべり止め装置装着規制というのは、スタッドレスタイヤを装着しているか、夏タイヤにチェーンを装着していれば走行可能というものです。オールシーズンタイヤであればこちらの規制をクリアすることが可能になります。
また実際のチェーン規制については都道府県ごとに規制の詳細は異なっているため、注意が必要です。
オールシーズンタイヤの中でもチェーン規制対応のものとそうではないものがあるので、購入時に確認することをおすすめします。
オールシーズンタイヤのデメリット
オールシーズン対応といっても弱点はあるため、少し詳しくご紹介していきます。
アイスバーンには向かない
凍結した路面でも「走る」「曲がる」「止まる」を実現するために、スタッドレスタイヤは夏タイヤにはない特別なパターンを採用し、ブロックや溝のデザインが全く異なっていることをご存知でしょうか?
夏タイヤのデザインは比較的均一で整ったブロック面ですが、スタッドレスタイヤはブロック面に無数の切れ込みを入れた「サイプ」が設けられています。このサイプによって凍てついた路面を引っ掻き、グリップ力を高めることを可能にしているわけです。
しかし、オールシーズンタイヤにはサイプがなく、凍結路では性能を維持することができません。シャーベット状の雪は路面自体が凍っているわけではないので問題はないのですが、凍結となるとサイプによるエッジ効果や除水効果などが必要とされるため、オールシーズンタイヤでは太刀打ちができません。
性能はオールマイティ
オールシーズンタイヤはサマータイヤとスタッドレスタイヤ双方の良いところを兼ね備えて作られています。つまり、燃費性能やグリップ性能などが非常に高いとはいえません。やはり夏タイヤ、スタッドレスタイヤまでのレベルを期待するには無理があるでしょう。
しかし、今後の進化によっては性能の向上も十分期待できるのではないでしょうか。
寒冷地では使えない
豪雪地帯やスキー場といった冬季中は道路が見えなくなるような場所ではオールシーズンタイヤを使用することは難しいでしょう。スタッドレスタイヤとチェーンの準備が必要になります。
タイヤの選択肢がまだまだ少ない
サマータイヤやスタッドレスタイヤのようにグリップ性能や低燃費性能などが充実しているとはいえません。とはいえ2018年以前には2メーカーしか展開していなかったオールシーズンタイヤが、2019年には各メーカーからの参入が相次いでいます。
つまり各メーカーがオールシーズンタイヤに力を入れてきていると言い換えることができるため、これからさまざまな研究開発が期待されるでしょう。
オールシーズンタイヤの表記・見分け方
オールシーズンタイヤを選択する場合には、確認しておくべきポイントがあります。
- タイヤの側面に「SNOW」あるいは「M+S」のどちらかが刻印されていること
- SNOW…雪に対応していることを示すマーク
- M+S…MUD+SNOWは泥(ぬかるみ)と雪に対応
この表記により性能が証明されているということができます。
- 「スノーフレークマーク」が刻印されていること
これは別名「Severe Service Emblem(シビア サービス エンブレム)」といい、雪の結晶がマークになっています。
このマークは世界最大の国際標準化・規格設定機関の試験を意味する「ASTM」に認められたことを意味するものです。民間機関ながら国際的に権威を持つアメリカの材料試験協会が評価したことを表しているので信頼されています。
このようにタイヤ側面に刻印されたマークで判断することが可能です。
オールシーズンタイヤはこんな人におすすめ!
比較的温暖な地域ならば、もし雪が降ってもすぐにシャーベット状になり溶けることが多いのではないでしょうか?雪が全く降らなければ何の問題もありませんが、年に1~2度降るかもしれない雪に対して準備をしている人にとってオールシーズンタイヤは非常におすすめといえるでしょう。
オールシーズンタイヤの価格相場
メーカーやタイヤサイズなどによって大きな価格差があります。低価格なものは1本5,000円前後ですが、高額なものは20,000円ほどのタイヤもあります。
サマータイヤやスタッドレスタイヤを選ぶ感覚でオールシーズンタイヤを選択することは十分可能です。おおよそですがホイールを付けないタイヤのみの金額で約2万円~5万円(4本)ほどが主流になっています。インターネット通販なら、相場の半額近い価格で購入できることがあるので、まずはこちらのオートウェイから検索して価格をチェックしてみましょう。
オールシーズンタイヤの寿命・交換時期
寿命
オールシーズンタイヤの寿命はサマータイヤと変わりません。どのタイヤであっても走行距離によって大きな差が出るものですが、通常の寿命、交換時期は3年~5年といわれています。オールシーズンタイヤはスタッドレスタイヤを改良したものであるため、摩耗しやすいと思われることもありますが、そんなことはありません。
一般的にスタッドレスタイヤは低温でも柔らかさを保てるように特殊なコンパウンドが使用されています。このコンパウンドは熱を持ちやすいため、もし夏にスタッドレスタイヤを履いていると高速走行中にバーストする危険があるとされているのです。
オールシーズンタイヤにも柔らかさを保つために特殊なコンパウンドは使用されていますが、サマータイヤに近いゴムを使用した専用設計に基づいているため安心して使用することができます。
タイヤの寿命はタイヤの種類によるものではなく、交換時期・ひびやキズ・スリップサインなどを確認することが大切になってくるでしょう。
交換時期
オールシーズンタイヤの交換時期については注意が必要です。降雪のない春から秋の間には、サマータイヤと同様にタイヤの側面に刻印された△のスリップサインで交換時期を見極めます。
もう一つの印としてスタッドレスタイヤと同様、残りの溝が5mmまで摩耗した場合に交換を示す矢印のプラットフォームが刻印されています。
スタッドレスタイヤを見たことのない人には分かりにくいかもしれませんが、オールシーズンタイヤにはこの2つのサインが記されているため、それぞれを確認し、交換時期を見極めなければなりません。
おすすめのオールシーズンタイヤ
2019年は新たにオールシーズンタイヤの販売に力を入れて始めたメーカーも多くなってきました。現在、販売をしているメーカーは以下の通りです。
ブリジストン、グッドイヤー、ファルケン、ピレリ、ミシュラン、MAXXIS、コンチネンタル、ハンコック、ネクセン、ナンカンが挙げられます。その中からおすすめのタイヤをご紹介していきます。
グッドイヤー「Vector 4Seasons Hybrid」
Vシェイドトレッドは、センターから左右に深く入れられた切込みで高い排水性能を発揮します。またオールウェザーシリコンパウンドにより強いグリップ力を実現しました。グッドイヤーでは冬タイヤ規制の高速道路での使用も通行を可能にしています。
グッドイヤーが最初にオールシーズンタイヤを販売してきた実績から、動画を配信しユーザーの不安や悩みに答えています。例えばオールシーズンタイヤを履いた雪道での発進の仕方や、雪道でのブレーキ性能の比較などさまざまです。
どれくらいのグリップ力があるかなど、自分の目で確かめられるのは嬉しいですね。
ファルケン「EUROWINTER HS 449」
高密度シリカと新たなポリマーを配合したコンパウンドを採用しています。ゴム素材には、剛いながらも接地面だけを柔らかくすることに成功した特殊ゴムを使用しました。広く長い溝を数多く配置したパターンの採用は排水性の向上を目指しています。
路面への密着性が高くなることで接地面積も広くなります。さまざまな路面状況に対応しグリップ力も高めました。タイヤには欧州で冬タイヤとして認証された「スノーフレークマーク」が刻印されており、突然降り始めた雪にも安心感を得ることができそうです。
ダンロップ「ALL SEASON MAXX AS1」
2019年10月1日ついにダンロップからオールシーズンタイヤが新しく発売されます。サイズの展開が豊富で乗用車、ミニバン、SUVまで広く展開するため、期待できそうです。
新開発された「超マルチコンパウンド」が採用され、夏でも冬でも高い操縦安定性を確保しています。雪上ブレーキ性能は、「エナセーブEC204」と比較して49%向上しているという実験結果が出されました。
ダンロップが満を持して発売するオールシーズンタイヤの実力が気になります。
タイヤ交換するならオールシーズンタイヤも検討しよう!
数少なかったオールシーズンタイヤの分野にも各メーカーが名乗りを挙げだしている今、性能は進化していくと考えられます。
自分が住む地域の気候にもよりますが、温暖な気候であまり雪が降らないのであれば、面倒なタイヤ交換の回数を減らすことができるかもしれません。そのための出費も押さえることができるので、検討してみる価値はあるのではないでしょうか。
まとめ
海外では新車に付けられているほど認知度のあるオールシーズンタイヤのことを、まだ知らない日本人は多いでしょう。しかし雪の少ない地域に住む人にとって、負担を減らすことができる新たなカテゴリーの誕生は、今後周知される存在といえそうです。
アイスバーンや高速道路の全車両チェーン規制での使用を避けるなど、本来の意味を認識することで選択の幅を広げ、もっと快適なカーライフを楽しめることを期待したいですね。